研究課題
西部北太平洋に分布するニホンウナギの産卵回遊における航海機構を明らかにするため、前年度に解析に供した個体の行動追跡データの再解析を行った。昨年度の解析によって、低水温環境を経験したニホンウナギは、黒潮などの比較的高水温の環境を経験した際の遊泳水深よりも浅い水深を遊泳することが分かった。今年度の解析によって、経験水温が低いほど、日出時に見られる大規模な潜降行動を開始するタイミングが通常よりも遅く、日没時に見られる大規模な上昇行動を開始するタイミングが通常よりも早いことが分かった。以上の解析結果と昨年度の研究結果を総合し、ニホンウナギは上昇行動の誘因である水温と潜降行動の誘因である光によるモチベーションの不均衡によって遊泳水深の変化が起こるとする仮説を得た。
3: やや遅れている
今年度までにポップアップタグによる産卵回遊行動追跡データの解析および数値シミュレーションによる定位方法の推定は順調に進展している。しかし、地磁気を記録するデータロガーを用いた放流実験は、購入したデータロガーの動作不良によって実施できなかった。この放流実験は、データロガーを修理もしくは交換した上で、次年度以降に実施したい。
次年度は、ウナギ属魚類魚類におけるニホンウナギの産卵回遊生態の特性を明らかにするために、フランス国立自然史博物館に長期滞在して集中的な国際共同研究を展開する。現地で得られる大西洋種の産卵回遊生態の情報をこれまでに得られたニホンウナギの産卵回遊生態に関する研究結果を比較することで、ニホンウナギおよびウナギ属魚類の産卵回遊行動と航海機構の特性の解明を目指す。
本来、次年度使用額を用いて地磁気観測データロガーを購入する予定であったが、既に所有している同機種のデータロガーの動作不良があった。そのため、新規のデータロガーの購入を断念し、既に所有しているデータロガーを修理もしくは交換した上で使用し、本研究における同データロガーの有効性を確認する必要があると判断した。次年度は、フランス国立自然史博物館に長期滞在を行い、集中的な国際共同研究を展開する予定である。次年度使用額は、データロガーの修理・交換費および国際共同研究にかかる渡航費として使用する計画である。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)
Zoological Studies
巻: 62(46) ページ: -
10.6620/ZS.2023.62-46