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2023 年度 実施状況報告書

米生産調整の推進における情報処理手法の地域比較:農業再生協議会の多様性に着目して

研究課題

研究課題/領域番号 22K14963
研究機関宇都宮大学

研究代表者

小川 真如  宇都宮大学, 農学部, 助教 (60815554)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワード米生産調整 / 農業再生協議会 / 情報処理手法 / 水田活用の直接支払交付金 / 戦略作物助成 / 産地交付金 / 水田収益力強化ビジョン / 5年水張りルール
研究実績の概要

2023年度は、①前年度行った農業再生協議会に対する全国悉皆調査の整理、②農業再生協議会に対する追加の全国悉皆調査の実施、を中心に行いながら、現調査及び学会・研究会等での研究結果の報告を行った。
理論研究では、水田収益力強化ビジョンのような理念の策定に関して、農業経済学における研究蓄積が薄いことを指摘し、柏祐賢著『農学原論』を取り上げて、理論的な問題点を指摘した。ここでいう課題とは、柏祐賢著『農学原論』の理論的な課題のみならず、日本農学は、既存の研究を学術的な批判をもって乗り越えるのではなく、批判ではなく無視する形で乗り越えてきたのではないかという問題提起であった。
こうした実態は、理念法である食料・農業・農村基本法の改正をめぐる議論に象徴して確認することもできた。
このほか、東北地方のA市にて経営所得安定対策等の実施状況の詳細な調査分析や、市内農家の悉皆調査を行い、制度上の課題が営農に与える影響について分析した。この分析結果については2024年度に追加調査を行う予定である。
そのほかの研究実績を含めて、本研究の前半(2022~2023年度)に行った研究より、統計分析・理論分析が進んだ。これにより、本研究の後半(2024~2025年度)で集中して行う実態分析への準備が整った。
なお、研究成果は、学会報告や招待講演、学術論文のほか、学術書として『農業再生協議会の現状』(刊行済み)、『農業再生協議会論序説』(刊行決定済み)として発表した。また、研究代表が主催する研究会「農業再生協議会に関する研究会」を新たに設置し、調査研究の成果を一般向けに公開するとともに、農業再生協議会に関する情報交換の場を運営してきた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

水田収益力強化ビジョンのような理念の策定、あるいは、米生産調整にかかる目安の配分、「水田活用の直接支払交付金」の制度内容などについては、従来、関心がある者は、同制度を担当する実務者などに限られていた。
ところが、食料・農業・農村基本法改正の議論が進んだことや、地域計画の策定、「5年水張りルール」など「水田活用の直接支払交付金」の制度変更の周知が進んだことなどにより、2023年は日増しに社会的関心が高まっている状況を感じ取れる状況にあったため、調査が行いやすい環境となり、調査研究が計画以上に進展した。

今後の研究の推進方策

「現在までの進捗状況」で記したように、社会情勢の変化に伴い、調査研究が進めやすくなり、調査対象としては従来設定が困難であった調査対象にも調査が可能な状況となりつつある。
たとえば、日本を代表する主要な農業関連団体のうち複数団体は、米生産調整や農業再生協議会、「5年水張りルール」などについて、自分たちは関係ないとして2021年度時点では調査協力を断られた経緯がある。しかし、2022年度以降の情勢変化を踏まえて、関心が高まっており、調査協力が得られる事例が増えてきた。このような現象は、団体にとって水田農業政策が「他人事」から「自分事」へと変化した過程であるとも考えられ、そこには意識変化に伴う情報処理があったと推察される。

本研究の後半(2024~2025年度)で集中して行う実態分析では、社会情勢の変化に伴う情報の伝達・意識の変化にも留意し、農業再生協議会の多様性に着目しながら、米生産調整の推進における情報処理手法の地域比較をさらに進めていく。

次年度使用額が生じた理由

一部謝金が不要となったことや、旅費を当初よりも節約できたため、次年度使用額が生じた。一方、調査の進展により、追加調査が必要となっており、次年度に使用する計画である。

  • 研究成果

    (26件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (16件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 5件) 図書 (2件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] リッケルトの科学分類に対する柏祐賢による解釈の特徴―古典とされるリッケルトと柏祐賢の学説における「中間領域」の扱いの差異に着目した一考察―2024

    • 著者名/発表者名
      小川真如
    • 雑誌名

      農業経済研究

      巻: 96(1) ページ: 採録決定済み

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 食料・農業・農村基本法下の〈農業〉の変化と展望:認識論的分析と統計分析の接合より2024

    • 著者名/発表者名
      小川真如
    • 雑誌名

      農業問題研究

      巻: - ページ: 採録決定済み

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 食料・農業・農村基本法改正の成果を高く評価する(1)―安保理機能拡充時代の基本法から安保理機能不全時代の基本法へ―2024

    • 著者名/発表者名
      小川真如
    • 雑誌名

      週刊農林

      巻: - ページ: 採録決定済み

  • [雑誌論文] 食料・農業・農村基本法改正の成果を高く評価する(2)―「食料安全保障の確保」が意味するもの―2024

    • 著者名/発表者名
      小川真如
    • 雑誌名

      週刊農林

      巻: - ページ: 採録決定済み

  • [雑誌論文] 食料・農業・農村基本法改正の成果を高く評価する(2)―基本法改正の成果―2024

    • 著者名/発表者名
      小川真如
    • 雑誌名

      週刊農林

      巻: - ページ: 採録決定済み

  • [雑誌論文] 食料・農業・農村基本法の改正:国連安保理の機能不全に対応2024

    • 著者名/発表者名
      小川真如
    • 雑誌名

      中国新聞

      巻: 2024年4月27日 ページ: オピニオン面

  • [雑誌論文] 「水田活用の直接支払交付金」の見直しが農地利用に与える影響2023

    • 著者名/発表者名
      小川真如
    • 雑誌名

      農業農村工学会誌

      巻: 91(9) ページ: 3-6

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 食料安全保障からみた日本のお米と田んぼ2023

    • 著者名/発表者名
      小川真如
    • 雑誌名

      web版月刊JA

      巻: 2023年10月号 ページ: -

  • [雑誌論文] 新たな「米と日本人」論2023

    • 著者名/発表者名
      小川真如
    • 雑誌名

      食文化研究

      巻: 19 ページ: 48-52

  • [雑誌論文] The role of Japan’s agricultural restoration councils during natural disasters: a case study of water withdrawal restrictions due to the 2018 Mt. Iwo eruption2023

    • 著者名/発表者名
      Ogawa Masayuki
    • 雑誌名

      Paddy and Water Environment

      巻: 22 ページ: 31~39

    • DOI

      10.1007/s10333-023-00950-w

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 農業政策の評価指標はこれでよい?2023

    • 著者名/発表者名
      小川真如
    • 雑誌名

      農業経営者

      巻: 323 ページ: 15-20

  • [雑誌論文] 飼料用米の2024年からの補助金減額、政府予算案をどう思う?2023

    • 著者名/発表者名
      小川真如
    • 雑誌名

      農業経営者

      巻: 324 ページ: 26-30

  • [雑誌論文] コメ問題の論議に新たな視角を〈1〉2023

    • 著者名/発表者名
      小川真如
    • 雑誌名

      週刊農林

      巻: 2514 ページ: 3-3

  • [雑誌論文] コメ問題の論議に新たな視角を〈2〉2023

    • 著者名/発表者名
      小川真如
    • 雑誌名

      週刊農林

      巻: 2515 ページ: 3-3

  • [雑誌論文] コメ問題の論議に新たな視角を〈3〉2023

    • 著者名/発表者名
      小川真如
    • 雑誌名

      週刊農林

      巻: 2516 ページ: 3-3

  • [雑誌論文] 現代日本農業論考2023

    • 著者名/発表者名
      小川真如
    • 雑誌名

      農業・農協問題研究

      巻: 80 ページ: 61-63

  • [学会発表] 経営所得安定対策等の実施スケジュールの実態と課題―東北地方A市の運用実績および水田活用の直接支払交付金受給者悉皆調査より―2024

    • 著者名/発表者名
      小川真如
    • 学会等名
      日本農業経済学会
  • [学会発表] 水田農業政策の転換と水田農業の明日について2024

    • 著者名/発表者名
      小川真如
    • 学会等名
      山形県令和5年度「水田活用産地づくりフォーラム」 2024年3月18日 山形県 招待有り
    • 招待講演
  • [学会発表] 新たな「コメと日本人」論2023

    • 著者名/発表者名
      小川真如
    • 学会等名
      日本家政学会食文化研究部会6月定例研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] 世界・全国からみた富山県農業の現状と可能性~未来と今を「考えていくための考え方」~2023

    • 著者名/発表者名
      小川真如
    • 学会等名
      富山大学・富山県主催 農業経済学に関する公開講座「知ってる?富山の多様な”農”と”食”」
    • 招待講演
  • [学会発表] 水田農業政策の大転換と今後の水田利用のあり方2023

    • 著者名/発表者名
      小川真如
    • 学会等名
      東京農工大学生産環境工学部会同窓会2023年総会記念講演
    • 招待講演
  • [学会発表] 水田農業のプリンシプルとは何だろうか―コメと田んぼの歴史とこれからの課題―2023

    • 著者名/発表者名
      小川真如
    • 学会等名
      東京農工大学農学部「灌漑排水工学」第12回
    • 招待講演
  • [図書] 農業再生協議会論序説2024

    • 著者名/発表者名
      小川真如
    • 総ページ数
      -
    • 出版者
      学術研究出版
  • [図書] 農業再生協議会の現状2023

    • 著者名/発表者名
      小川真如
    • 総ページ数
      93
    • 出版者
      農政調査委員会
    • ISBN
      9784931118225
  • [備考] 小川真如のしごと

    • URL

      https://ogawaworks.net/

  • [備考] 農業再生協議会に関する研究会

    • URL

      https://saiseikyo.jimdosite.com/

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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