研究課題/領域番号 |
22K14968
|
研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
田村 匡嗣 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (60750198)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | In vitro模擬消化試験 / 糖質消化性 / ポリフェノール / はと麦 / 大麦 / 食品加工 |
研究実績の概要 |
糖質を含む食品の摂取は,急激な血糖値の変化を引き起こす.この反応は,肥満,2型糖尿病,高脂血症および心疾患などの生活習慣病の発症と密接に関係する.そのため食後血糖値の上昇は,ヒトの血液より算出するグリセミック・インデックス(GI)や,ヒトの消化器官をガラス器具内で再現したin vitro模擬消化試験で算出する糖質消化性や推定GIによって評価されている. 近年,大麦やはと麦は,豊富に含まれるβ-グルカンやポリフェノールの糖質消化性を緩やかにする機能性などから,国内外で小麦や米と置換した利用が広まっている.穀物の糖質消化性,食味および機能性成分は,加工に基づく構造的特性が重要な要因であり,構造的特性の変化によって制御可能なことを意味する. そこで本研究は,大麦およびはと麦の加工操作に伴う構造的特性の変化による糖質消化性,食味および機能性成分の最適条件の解明を目的とした.R5年度は,in vitro模擬消化過程において,加水比の異なるはと麦の加水分解された糖質量(糖質消化率)および機能性成分として総ポリフェノール量の溶出量(溶出総ポリフェノール量)の変化を調査した.実験の結果,加水比の増加(×1.5-3.0)に伴い,糖質消化率および溶出総ポリフェノール量が上昇した.これらには,加水比の増加に伴うはと麦の吸水量増大と体積膨張に伴う組織構造の損傷によって,デンプンと消化酵素の反応が上昇したためと考えられる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R5年度は,はと麦の加水比を変化させ,in vitro模擬消化過程における糖質消化性および溶出総ポリフェノール量を評価した.当初の仮説通り,組織構造の損傷を増すことによって,これらの値が上昇した.その他,精麦度の異なる大麦粒の糖質消化性も現在調査中である.研究は概ね予定通り進行している.
|
今後の研究の推進方策 |
R6年度は,レトルトや焙煎などで処理した大麦およびはと麦の糖質消化性および機能性の分析と組織構造の観察を実施予定である.また,組織構造変化以外の含有成分の変化による糖質消化性への影響を調査するために,組織構造を予め損傷させた粉末試料を使った評価も検討予定である.
|