研究課題/領域番号 |
22K14986
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
渡辺 雄貴 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 助教 (50781788)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 卵胞発育 / エストロジェンのフィードバック |
研究実績の概要 |
畜産経営に甚大な被害を及ぼす家畜の卵胞嚢腫や、ヒトの不妊要因の一因である多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)では、その罹患牛や当該患者中の血中黄体形成ホルモン(LH)値が高いことから、エストロジェン(E2)の負のフィードバック機構の異常が発症の一因と考えられている。しかし、このE2のフィードバ ック機構を担う神経経路は不明な点が多く残されている。本研究では、E2の負のフィードバック機構の神経基盤を明らかにすることを目的とする。
今年度は、主に下記の2つの実験をおこなった。 (1)事前研究結果からニューロペプチドB(NPB)をE2の負のフィードバック制御機構を担う候補因子の一つとして考えている。そこで今年度はNPBの受容体遺伝子であるNpbwr1のノックアウトラットの作出をGenome-editing via Oviductal Nucleic Acids Delivery(GONAD)法を用いておこなった。その結果、F0個体が30匹得られ、DNAシーケンシングの結果、両アレルで欠損がみられた可能性の高い個体が7匹得られた。現在は、F1世代同士との交配により、F2世代の作出を進めている。 (2)多嚢胞性卵巣症候群と近い表現型を示すラットモデル;経母体的にアンドロジェンを投与されたラット(Prenatal androgenized rat: PNA rat)、の作出をおこない、当該ラットの評価をおこなった。経母体的にアンドロジェンを投与したところ、既報の通り、生まれてきたメスラットの肛門性器官距離(AGD)は溶媒投与メスラットに比べ、有意に延長していたことが確認できた。加えて、膣垢検鏡法により性周期の同定をおこなったところ、PNAラットは性周期が乱れていたことが明らかとなった。また、発情休止期における3時間の平均血中LH濃度は溶媒投与ラットに比べ、PNAラットで有意に高いことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、NPBのトレーサー実験が未実施となっているものの、Npbwr1 KOラットの作出に向けた取り組みや、PCOSモデルラットの作出については、当初の予定どおり実施できており、おおむね順調に研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、Npbwr1 KOラット系統の確立、F2世代での表現型解析をおこなう。また、PNAラットのE2の負のフィードバック機構に及ぼす影響を卵巣除去モデルとE2投与-卵巣除去モデルとの比較により検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
PNAラットの組織を用いてRNA-seqを受託予定だったが、年度内でのサンプル準備が間に合わなかったため、次年度使用額が生じた。次年度にRNA-seqを受託する予定である。
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