研究課題/領域番号 |
22K15010
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
朝比奈 良太 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(PD) (00837487)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 誘導型皮膚関連リンパ組織 / アトピー性皮膚炎 / 樹状細胞 |
研究実績の概要 |
腸管や肺などの外界と接する上皮組織では、リンパ組織様構造が局所に認められ、侵入した抗原に対する生体防御機構としての役割が知られている。皮膚においては、炎症下で形成される誘導型皮膚関連リンパ組織(iSALT)が発見され、そこで樹状細胞によりキラーT細胞が活性化されることが示された。しかしながら、ヘルパーT細胞に対するiSALTの役割は検討されていないほか、活性化ヘルパーT細胞が病態の主軸を成すアトピー性皮膚炎におけるiSALTの関与は明らかになっていない。本研究では、iSALT内でのへルパーT細胞の活性化機構を解明し、ヒトとイヌのアトピー性皮膚炎におけるiSALTの役割を明らかにすることを目指す。 iSALT形成局所の免疫反応を解析するために光変換蛍光タンパク(KikGR)を用いて、1)KikGRを発現したオボアルブミン(OVA)特異的なヘルパーT細胞を移入した遅延型過敏症モデル、2)CD11c-YFP/KikGRマウスを用いた接触皮膚炎モデル、の2つの実験系を確立した。前者は、iSALT内の抗原特異的ヘルパーT細胞の解析、後者は樹状細胞を含むiSALT構成細胞の解析に用いることができ、いずれも共焦点レーザー顕微鏡によりiSALT選択的に蛍光標識してフローサイトメトリーで解析できることを確認済みである。これらの実験系を用いて、iSALT内のヘルパーT細胞は活性化およびTrmマーカーであるCD69の発現が高いこと、iSALTを構成する主な樹状細胞は古典的樹状細胞2型(cDC2)であることを特定した。 今後は、iSALTを標識した皮膚を用いたRNAシークエンスを行い、網羅的な解析からiSALTの新たな免疫学的意義の解明を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、光変換タンパクを活用したiSALT標識法を確立し、iSALT内ヘルパーT細胞の活性化マーカーの発現に加えて、iSALTを構成する樹状細胞サブセットを同定した。さらに、アトピー性皮膚炎患者皮膚を用いた次世代マルチプレックス免疫化学染色であるイメージングマスサイトメトリーによる解析を行うため、各メモリーT細胞サブセットおよび樹状細胞サブセットを評価できる抗体パネルを概ね構築した。
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今後の研究の推進方策 |
確立した実験系を用いて、iSALT内細胞(赤色蛍光)とiSAL外細胞(緑色蛍光)をセルソーターで分出後にRNAシークエンスを行い、iSALTの免疫学的役割に関わる分子を選出する。候補分子を加えた抗体パネルを用いて、次世代マルチプレックス免疫化学染色であるイメージングマスサイトメトリーによりアトピー性皮膚炎患者皮膚を解析し、iSALT内における構成細胞および候補分子の発現を明らかにする。 また、iSALT内ヘルパーT細胞を選択的に除去するマウス(PA-cre/iDTRマウス)の作製を現在進めており、iSALTの機能解析を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、細胞内Ca濃度の変動をGFPの蛍光強度に変換できるカルシウム感受性蛍光タンパク(G-CaMP)を発現するヘルパーT細胞を移入した遅延型過敏症モデルマウスを用いて、二光子顕微鏡を用いた生体イメージングによりiSALT内でのヘルパーT細胞に対する抗原提示を証明する予定であった。しかし、G-CaMPシグナルは運動性の高いT細胞でも陽性シグナルを認めることから抗原刺激特異的ではない可能性があり、in vivoでの評価が困難であると考えられた。そのため、この研究にあてる予定だった予算を次年度に繰り越し、RNAシークエンスやイメージングマスサイトメトリーなどの解析に用いる予定である。
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