研究課題/領域番号 |
22K15011
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
南 昌平 大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員(常勤) (80889460)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | コロラドダニ熱ウイルス / マダニ媒介性感染症 / リバースジェネティクス |
研究実績の概要 |
既存のコロラドダニ熱ウイルス(CTFV) cDNAをクローニングしたプラスミドでは組換えCTFVの回収ができなかったため、再度増殖性の高いウイルスを選定することとした。多様な細胞株へとCTFVを感染させ、その増殖能を評価した。また、CTFV 15株をVero細胞へと感染させ、プラーク形成能を評価し、リバースジェネティクス法の親株を選定した。 選定した株をT7プロモーター及びターミネーターを付与したプラスミドへウイルスゲノムcDNAをクローニングし、T7ポリメラーゼ恒常発現細胞であるBHK-T7/9細胞へトランスフェクションした。細胞内でプラスミドDNAから転写されたRNAをゲノムに持つ人工組換えCTFVの作出に成功した。 作出された組換えCTFVは野生株と同様の増殖性を示し、12本あるウイルスゲノムも同様の大きさであったが、人工的に加えられたアミノ酸変異のない塩基置換(非同義置換)が確認され、人工的に作製されたウイルスであることが確認された。 この人工組換えCTFV作製法は他のレオウイルス科ウイルスの方法と比べまだ効率性が高くない。確立した本システムによって、1分節が組換わったリアソータントの作出には成功したが、人工遺伝子を導入したレポーターウイルスの回収には至っていない。 更なる回収効率の改善が必要であると考え、現在はトランスフェクションするDNA量を調整する等の改善を検討している。 また、不活化したCTFVをマウスへと免疫し、抗血清を得た。その結果、マウスの血清はVP7に対する抗体を多く含むことがわかり、抗原性の高いウイルスタンパク質を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の中心となるリバースジェネティクス法の確立に成功し、人工組換えコロラドダニ熱ウイルスの作製に成功している。 ウイルス株の選定やプラスミドのクローニングなどを実施し、おおむね予定通りに研究が進んでいる。 得られた人工組換えコロラドダニ熱ウイルスの性状解析も進んでおり、基礎データの蓄積は当初の計画以上に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
確立したリバースジェネティクス法の人工組換えコロラドダニ熱ウイルス(CTFV)回収効率を改善し、レポーターウイルスの回収を試みる。特に、ルシフェラーゼやGreen fluorescent proteinの搭載を検討しており、人工遺伝子がウイルスゲノムのどの部分に挿入可能かを検討する必要がある。 同時に、他のCTFV株のウイルスゲノムcDNAをクローニングし、リアソータントの作出やリバースジェネティクスに利用してCTFVの基礎的な性状解析を進める。 また、野生型CTFVをマウスへ感染させる実験を行い、適切な動物モデルであるかを評価する。VP7を哺乳類細胞で発現させ、精製した抗原を免疫し、抗CTFV抗体を得ることで、間接蛍光抗体法やウエスタンブロットで評価可能な抗体作製を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が概ね良好に進み、本年度では想定した金額よりも使用額が低くなった。特に、高額となるトランスフェクション試薬の使用量が抑えられたことが考えられる。しかし、本年度で円滑に進められたクローニングやトランスフェクションは初歩的な人工ウイルス合成法であり、次年度に行うレポーターウイルスの回収といった発展的な実験にはより多くの消耗品等を用いる可能性が高い。また、その発展的な研究が成功した際に学会発表や論文投稿などにかかる費用も本年度より高額になることが予想されるため、次年度へ繰越す予定である。
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