研究課題/領域番号 |
22K15013
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
三苫 修也 宮崎大学, 医学部, 助教 (50911111)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 牛IL-2 / CD122 / IL-2変異体 |
研究実績の概要 |
インターロイキン2(IL-2)はT細胞やN K細胞を刺激し免疫を賦活化したり制御性T細胞を誘導し免疫を抑制したりと様々な活性を持つ。牛伝染性リンパ種ウイルス(BLV)に感染し持続性リンパ球増多症(PL)を発症した牛では血中のCD4T細胞から産生されるIL-2量が減少していることから、B L V感染細胞を排除する防御免疫を担うCD8T細胞やNK細胞の増殖に必要なIL-2の不足が推察される。一方で、T細胞由来のIL-2がPL発症牛のB細胞増殖を促進させることも報告されている。本研究の目的は、免疫の賦活化や抑制と様々な活性を持つIL-2を標的とし牛IL-2複合体等を作製しその作用機序を解明することで、選択的なNK細胞増殖を誘導し、BLVのような難治性ウイルス感染症に対して有効な免疫賦活化できるか探索することである。まずは、牛におけるIL-2作用機序を解析するツール作りから試みた。今回、牛IL-2-IL-2受容体の結合能を評価するためのIL-2受容体各サブユニット(CD25・CD122・CD132)持続発現細胞を樹立した。また、IL-2を表面に持続発現させた細胞も樹立した。これは可溶性各IL-2受容体サブユニットとの結合を評価するために用いる。また、IL-2に対する各細胞サブセットの反応強度を推測する際に重要なCD122の牛における発現を調べていく必要があるが、牛IL-2受容体ベータ鎖(CD122)モノクローナル抗体が存在しないため、今回マウス抗牛CD122モノクローナル抗体を作製した。また、牛におけるIL-2変異体の基礎データ及び研究がないためヒト及びマウスでCD25との結合部位と予測されている部位を標的に9つの牛IL-2変異体を作製し、精製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
重要な進捗として、本研究の課題であるNK細胞選択的刺激の作用機序の解明を担う各牛IL-2受容体サブユニットCD25/CD122/CD132持続発現細胞及び牛IL-2細胞表面持続発現細胞を樹立できたことが挙げられる。これにより、抗牛CD122モノクローナル抗体のスクリーニング作業もスムーズにいき、作製することができた。また、牛IL-2変異体は各変異体とも解析に十分な収量を得ることができている。 このように、牛IL-2の複合体や変異体が細胞刺激への選択性をもたらす機序を解析するためのツールを順調に作製している一方、牛IL-2及び牛IL-2抗体複合体の牛末梢血単核細胞(PBMC)に対するNK細胞選択的刺激反応に関する解析の条件検討が多岐に渡るため、解析自体が遅れている。以上の事から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、牛IL-2/抗体牛IL-2複合体及びIL-2変異体に対する牛PBMCの反応を各細胞サブセットCD4T細胞/CD8T細胞/γδT細胞/NK細胞の染色しながらCFSE増殖アッセイにて評価する。その際、牛IL-2の野生型を基準とし、濃度を振りながら条件検討を重ねていく。その後、今回樹立した牛IL-2受容体サブユニット持続発現細胞及び牛IL-2細胞表面持続発現細胞を用いて、牛IL-2受容体各サブユニットに対する結合能をフローサイトメトリーにて評価する。その際には、各IL-2変異体及び可溶性IL-2受容体に融合させたV5エピトープにて、標的タンパク持続発現細胞との結合度を評価していく。また、実験に供する牛PBMC各細胞サブセットCD4T細胞/CD8T細胞/γδT細胞/NK細胞/B細胞上のCD25とCD122の発現をフローサイトメトリーにて評価し、牛IL-2複合体及び変異体に対する反応性との関連性を見ていく。
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