研究実績の概要 |
本年度の研究では、Volume overloadのモデル犬を用いて、shear wave elastographyによる肝硬度と心臓カテーテル検査で測定した平均右心房圧の相関性を評価した。まず本研究では、覚醒下、鎮静下、全身麻酔下での肝硬度の影響を評価したが、すべての群で有意差は認められなかった。次に全身麻酔下で、Volume overloadを行い右心房圧が0-5 mmHg(Pre), 6-10 mmHg, 11-15 mmHg, 16-20 mmHg, 21-25 mmHgに到達するまで上昇させると、肝硬度は右心房圧の上昇と共に一次線形的に上昇し、Preとの各群間の一対比較で有意差が認められた。さらに実測右心房圧と肝硬度は、統計学的に非常に強い相関が認められ、右心房圧>10 mmHg, >15 mmHg, >20 mmHgのAUCはそれぞれ0.9896(感度100%、特異度91.7%), 0.9907(感度94.4%、特異度94.4%), 0.9722(感度91.3%、特異度91.3%)と非常に高い予測性能を示した。加えて、Volume overload後の急速な右心房圧低下を目的に利尿剤を投与すると、急激に肝硬度が減少した。利尿剤投与後11-15 mmHgまで減少した時点の肝硬度は、Volume overload中の16-20 mmHgより低下し(P=0.0003)、Volume overload中の11-15 mmHgと同程度まで減少した。今回の研究結果から、肝硬度は右心房圧推定に有用であると共に、治療効果判定にも応用できることが示された。本研究の結果は、日本獣医循環器学会で口頭発表され最優秀学会発表賞(研究報告の部)を受賞すると共に、Journal of Veterinary Internal Medicineに投稿され受理された。
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