研究課題/領域番号 |
22K15018
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
吉本 翔 麻布大学, 獣医学部, 学振研究員 (70909168)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | CAR-T細胞 / T細胞の疲弊 / がん / イヌ / 遺伝子改変 |
研究実績の概要 |
キメラ抗原受容体発現T(CAR-T)細胞療法は、ヒト白血病患者において優れた治療効果を示したが、他の多くのがん種では白血病ほどの治療効果はみられていない。その要因の一つに患者体内でCAR-T細胞が疲弊している可能性が挙げられる。本研究では、CAR-T細胞の疲弊モデルを作製し、CAR-T細胞の疲弊メカニズムの一端を明らかにするとともに、CAR-T細胞の疲弊を防ぐ方法を探索する。 2022年度は、in vitroにおいてイヌのCAR-T細胞の疲弊モデルの作製に取り組んできた。標的抗原を発現するがん細胞株と共培養することによりイヌCAR-T細胞に繰り返し抗原刺激を与えることで、CAR-T細胞の増殖能や細胞傷害能は徐々に低下し始め、最終的に機能不全を誘導し疲弊状態にすることに成功した。一方、細胞株やCAR内の共刺激分子の種類によって、イヌCAR-T細胞の疲弊過程が異なることも示唆された。また培養条件によってもCAR-T細胞の疲弊への誘導過程は異なることも明らかとなった。これらの結果は、CAR-T細胞の疲弊という現象を解明する上で重要な所見であり、現在CAR-T細胞の疲弊機序に関して様々な仮説を立てている。 また、イヌCAR-T細胞上の特定の因子をノックアウトするためのCRISPR/Cas9法の条件検討を行い、CAR-T細胞へのダメージを抑えつつ特定の因子を効率的にノックアウトし分離する方法が確立できた。これにより、CAR-T細胞の疲弊メカニズムが明らかとなった場合、CRISPR/Cas9法により特定の因子をノックアウトし疲弊しにくいCAR-T細胞の作製が可能となった。 以上より、2022年度はCAR-T細胞の疲弊メカニズムの一端を明らかにするとともに、疲弊しにくいCAR-T細胞を作製するための方法構築まで完了でき、CAR-T細胞の疲弊という課題を解決する上で重要な成果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
イヌのCAR-T細胞の疲弊モデルの作製、及び疲弊メカニズムを解析する中で、当初の仮説の一部が否定される結果が得られた。一方、得られた結果はCAR-T細胞の疲弊という現象を明らかにするためには重要な知見がであり、新たな仮説が生まれたため、当初の計画の一部を変更しこれらの詳細の解析に時間を費やしている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度はin vitroにおいてイヌCAR-T細胞の疲弊モデルの作製、及び疲弊メカニズムについて解析を進めてきたが、その過程でイヌCAR-T細胞の疲弊に影響を与える候補因子を多数発見した。これらはいずれもCAR-T細胞の疲弊という現象を明らかにするためには重要な候補因子であることから、当初の研究計画を変更し、今年度はこれらの因子がイヌCAR-T細胞の疲弊過程に与える影響について、in vitroで詳細に検討していく。またin vitroで得られた結果がin vivoでも再現されることを明らかにするために、標的抗原を発現するがん細胞を移植したNSGマウスにCAR-T細胞を投与し、イヌCAR-T細胞の疲弊状態の解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画の遂行のため、2022年12月から2023年5月現在まで年度を跨って、共同研究先であるペンシルバニア大学に派遣中である。2022年度12月から3月分の旅費の事後清算が年度を跨った振込となったため、次年度使用額が0以上となった。2023年5月現在で事後振込は完了しているため、該当の額は使用済である。
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