研究実績の概要 |
急性腎障害(AKI)が生じた後に尿細管の再生機構が破綻した場合、不可逆的な線維化が生じて慢性腎臓病(CKD)に移行する。我々はこれまでの研究により、再生機構の破綻した尿細管にはAKI直後からCD44が発現することを見出している。本研究ではAKI直後の再生機構の破綻した尿細管におけるCD44の役割を明らかにすることにより、AKI to CKDの早期の現象を理解することを目的とした。 6週齢の雄性SDラットに腎虚血再灌流処置を施し、処置後1, 3, 5, 7, 14および28日に剖検し、各解析を行った。線維化は処置後14日からみられたことに対し、CD44陽性を示す拡張あるいは萎縮した尿細管は3から28日にかけて観察された。3および7日の拡張尿細管をレーザーマイクロダイセクションにより採材し、マイクロアレイを実施した。パスウェイ解析の結果、CD44はFibronectin 1(Fn1)を含む線維化関連因子の上流因子であることが示唆された。in situ hybridizationではFn1 mRNAは拡張尿細管の細胞質にて発現が亢進していたことに対し、fibronectinタンパクはこれらの尿細管の周囲間質に認められた。パスウェイ解析ではさらに、7日の拡張尿細管においてミトコンドリア機能低下を示唆する所見が得られた。 以上より、CD44は再生機構の生じた拡張尿細管において細胞外基質の産生・分泌を誘導していると考えられた。また、再生機構の破綻した尿細管ではミトコンドリア機能障害が生じることが示唆された。
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