研究課題/領域番号 |
22K15040
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
川澄 遼太郎 東京都立大学, 理学研究科, 特任助教 (60943545)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 合成致死 / がん / CTF18 / DNA複製 / DNA修復 / コヒーシン |
研究実績の概要 |
がん細胞の特徴の一つである異常な増殖は細胞にとって大きな負担となるため、補完のために特定の経路への依存が高まることが知られている。がん細胞が依存する経路を分子標的薬により阻害することでがん細胞を選択的に治療することができる。このように複数の遺伝子が同時に変異した場合に細胞死を誘導する現象を「合成致死」と呼び、その成功例として遺伝性乳がんの原因遺伝子であるBRCAの変異との合成致死を利用したPARP阻害薬が挙げられる。
CTF18はDNAの複製や修復、染色体の分配に関わることが知られている。出芽酵母を用いた研究から、複製や修復に関わる30以上の遺伝子と合成致死を示すことが報告されており、ゲノム安定性に寄与する遺伝子の変異を伴ったがん細胞を選択的に障害するためのターゲットとして有望である。報告者はCRISPR技術を使い動物細胞を用いてCTF18遺伝子欠損株を樹立し、様々な遺伝子との多重変異細胞を作製、遺伝学的解析を行うことでCTF18の高等真核生物における機能と、分子標的薬のターゲットとしての有用性の検証を目指した。
2022年度はDNAの材料であるdNTPの量を調整する酵素であるSAMHD1 とCTF18との二重欠損細胞を樹立し遺伝学的解析を行った。SAMHD1はAra-Cなどいくつかの核酸アナログ医薬を解毒する作用を持つことが報告されており、報告者の樹立したSAMHD1 遺伝子欠損細胞もAra-Cに対して感受性を示すことを確認した。また、CTF18 とSAMHD1の二重欠損細胞はそれぞれの単独欠損細胞よりも強い感受性をしめしたことから、二つの経路は独立していることが明らかとなった。したがって、SAMHD1の亢進によりAra-C 耐性となったがん細胞において、CTF18を阻害することでAra-Cによる治療の有効性の改善が期待できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本プロジェクトの遂行に必須である、オーキシンデグロン法を用いたCTF18の条件遺伝子欠損細胞は既に整備済みである。また、CTF18条件遺伝子欠損細胞を元に、今回報告したSAMHD1に加え、DNA複製に関わる遺伝子PRIMPOLとの二重条件遺伝子欠損細胞が樹立済みであり、すぐに解析を開始できる状態にある。並行して、CTF18との合成致死が期待されるNEDD8の阻害薬MLN4924を用いた実験の条件検討も済んでいるため概ね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
樹立済みであるCTF18とPRIMPOLの二重条件遺伝子欠損細胞の解析を進める。CTF18-PRIMPOL間に合成致死性は認められなかったものの、複製速度などへの影響が考えられるため、DNAファイバー法によりDNA複製への影響を検証する。また、先行研究からCTF18とPRIMPOLはいずれもAra-C耐性機構に寄与することが示唆されているため、Ara-C 耐性機構におけるCTF18、PRIMPOLの遺伝学的関係も調査する。 並行して、DNA修復に関わる因子(RAD52)や分裂期チェックポイントに関わる因子(MAD2、BUB1)の阻害薬を使用しCTF18との遺伝学的関係を調査する。阻害薬を使った実験の結果に基づいてオーキシンデグロン法による二重条件遺伝子欠損細胞を作製し、詳しい解析を進める。具体的には、細胞周期の解析を行うことで細胞死が誘導されるタイミングを検証、また、免疫染色を実施し分裂期における染色体分配の正確性等をテストする。分裂期の異常が認められた場合、コヒーシン除去因子であるWAPLとの三重条件遺伝子欠損細胞を作製し、致死性原因が姉妹染色分体間接着の不良によるものかを検証する。 また、CRISPR-Cas9システムを使った最新のスクリーニングにより、CTF18がPARP阻害薬とATR阻害薬に感受性を示す可能性が報告されたため、PARP阻害薬、ATR阻害薬を用いてCTF18との遺伝学的関係を調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来2022年度に購入予定だった阻害薬(RAD52, MAD2, BUB1)を2023年度に繰り越したため、差分を翌年度に請求する予定である。また、2022年度に計画していたIFOM分子腫瘍学研究所への滞在が2023年度秋頃へと延期となったため、滞在費と旅費を2023年度分として請求する予定である。
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