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2022 年度 実施状況報告書

RNAの酸化損傷ダイナミズムが制御するゼブラフィッシュ初期発生メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K15042
研究機関京都産業大学

研究代表者

石橋 幸大  京都産業大学, 生命科学部, 研究員 (30880968)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2024-03-31
キーワードゼブラフィッシュ / 初期発生 / RNA / 酸化ストレス
研究実績の概要

ゼブラフィッシュの初期発生過程において、活性酸素の一種である過酸化水素の細胞ないレベルと分布は発生段階や細胞群ごとにダイナミックに変化しており、これによって生じるRNAの酸化とトランスクリプトームの変化が密接にリンクしていると考えられる。まずは酸化損傷の生じたRNAを網羅的に同定するために、ゼブラフィッシュ胚からRNAを抽出したのち抗8-oxoG抗体を用いたRNA免疫沈降によって酸化損傷RNAを精製した。ポジティブコントロールとして、過酸化水素処理をしたゼブラフィッシュ胚からもRNAを抽出し同様の精製をおこなった。次世代シークエンスに供する前にRNAのクオリティコントロールをノザンブロッティングやRT-qPCRで行なったところ、酸化損傷に非特異的なRNAも大量に精製されていることが判明した。後の検討で、抽出したトータルRNAをそのまま免疫沈降に用いたことによるリボソームRNAのコンタミが問題であり、リボソームRNAの除去とRNAの断片化ののちに免疫沈降による精製をおこなう必要があると判明した。現在は改良したプロトコルによるRNAの精製と次世代シークエンスのライブラリ調整をおこなっている。
次世代シークエンスが遅れており内在のmRNAを用いた評価はおこなえていないが、蛍光タンパク質をコードするレポーターmRNAに酸化損傷を施し、ゼブラフィッシュ胚へのインジェクション実験をおこなった。その結果、翻訳開始因子eIF2alphaのリン酸化に端を発する統合ストレス応答や、MAPキナーゼp38のリン酸化によるストレス応答が惹起されることがわかった。各々のタンパク質のリン酸化の程度は、mRNAの酸化損傷の程度に応じて大きくなることも見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

ライブラリ調整のための酸化損傷RNAの精製法の検討に時間を要してしまったため、次世代シークエンスによる酸化損傷RNAの網羅的同定については遅れが生じている。これに伴い、ゼブラフィッシュ胚の内在mRNAのうち酸化損傷が生じている転写産物を用いた評価まで至っていない。一方で内在mRNAではないながらも、蛍光タンパク質レポーターmRNAへの酸化損傷導入とインジェクション実験によって、ストレス応答の評価は進んでいる。

今後の研究の推進方策

免疫沈降による酸化損傷RNAと次世代シークエンスによる、ゼブラフィッシュ初期発生過程におけるRNAの酸化損傷の網羅的同定を早急に進める。これで得られた内在の酸化損傷のターゲットの情報をもとに、レポーターmRNA同様に酸化損傷の導入とインジェクション実験をおこないストレス応答や発生への影響を評価していく。
酸化損傷によって生じる塩基である8-oxoG上では、コドンの解読異常によるリボソームの翻訳伸長が停止することが知られている。リボソームの翻訳伸長が長時間にわたって停止すると、後続リボソームが衝突し二量体リボソームの形成が誘発される。本来、この二量体リボソームは品質管理機構で解消されるとともに、この解消機構と共役してしばしば異常なmRNAの分解も誘導される。mRNAに生じた酸化損傷が、これらの品質管理機構の標的となっているかを評価するため、品質管理機構の引き金となる因子を欠損するゼブラフィッシュの変異体を用いた解析をおこなう。

次年度使用額が生じた理由

次世代シークエンスに供するRNAサンプルの精製法の検討に時間を要したため、次世代シークエンスのライブラリ調整に関わる物品や、その後の分子生物学的・生化学的手法による評価に関わる物品の購入を行わなかったため。これらの実験は令和5年度におこなう。
旅費については研究成果の学会発表に伴う費用として使用する。また人件費・謝金は投稿論文の英文校閲費、その他の費用は論文投稿料として使用する。

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公開日: 2023-12-25  

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