研究課題/領域番号 |
22K15046
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
張 志寛 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (60866937)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | SARS-CoV-2 / クライオ電子顕微鏡 / ウイルス粒子形成 / COVID19 / M protein |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) を引き起すSARS-CoV-2はベータコロナウイルス (β-CoV) 属の一員であり、エンベロープウイルス構造を有する。β-CoVの粒子は主に4種類の構造タンパク質 (spike, nucleocapsid, membraneおよびenvelop) 、脂質二重膜およびゲノムRNAから形成されている。その中のmembrane (M) タンパク質はウイルス粒子の脂質二重膜に局在する小型の膜蛋白質であり、β-CoVの粒子形成の段階で中心的な役割を果たしている。これまでに、Mタンパク質の構造は未知であり、それによるウイルス粒子形成の分子基盤も解明されていない。 本年度までの研究により、我々はクライオ電子顕微鏡を用いて、SARS-CoV-2のMタンパク質の2種類の立体構造を世界で初めて明らかにした。また、Mタンパク質の立体構造から特徴的な塩基性電荷を有する細胞質ドメイン(CTD)を見出した。変異体実験の結果、Mタンパク質のCTDにある塩基性残基はNタンパク質との相互作用に重要であることも検証できた。これは、ウイルスの形成に不可欠な役割を果たすこのMタンパク質の動きや働きを理解するための重要な一歩となる。これらの研究成果は、科学誌「Nature Communications」に掲載され、科学界から大きな反響を呼んだ。この成果は、新型コロナウイルスの粒子形成機構の解明と新たな治療法や予防策の開発に向けた重要な進展となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 二種類のMタンパク質の立体構造(Long and short forms)を解明した。 2. Mタンパク質とNタンパク質との相互作用部位を変異体実験で検証した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は下記の3点について重点的に検討し、推進する 1.In vitroでMタンパク質の多量体再構成法を確立する 2.クライオ電子顕微鏡を用い、Mタンパク質の多量体構造を解明する 3.Mタンパク質と他の構造タンパク質との相互作用プロファイリングを行う
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:予定していた旅費等は、パンデミックと規制の原因で使用とならなかった。 使用計画:次年度において、学会参加等の旅費として使用する予定である。
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