研究実績の概要 |
核内受容体型転写因子Peroxisome proliferator-activated receptor(PPAR)はα/δ/γの3サブタイプから成り、それぞれが代謝全般を多彩に統括制御する。そのうちPPARαを標的とするフィブラート系高脂血症薬とPPARγを標的とするチアゾリジンジオン系2型糖尿病治療薬が世界で繁用されており、そして現在3サブタイプの複数に作用するPPAR dual/panアゴニストが非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)治療薬として開発され各国で治験中である。 これまでの2年間で、フィブラート系薬のBezafibrate, Fenofibric acid, Pemafibrate、そしてNAFLD治験薬のLanifibranor, Elafibranor, Seladelpar とPPARα/δ/γとの複合体構造を可能な限り取得してきた。すでにSaroglitazarについては報告しているため、ほとんどのNAFLD治験薬のPPARα/δ/γとの複合体構造を報告できたことになる。さらにTR-FRET法によるCoactivator結合能やTransactivation assay、熱安定性のデータをまとめて、それらの薬の活性の特徴を明らかにしてきた。NAFLD治験薬はPPAR選択性などの特性が異なることから、今後はどのサブタイプの組み合わせで活性化させるのが最もNAFLD治療効果が高まるのか検証して、治療効果を最大限に高めつつ副作用を低減させたPPAR標的新薬の開発に貢献する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに取得したLanifibranorとSeladelparのPPAR3サブタイプとの複合体と、ElafibranorのPPARαとの複合体構造をPDBに登録し、Coactivator結合能、Transactivation assay、熱安定性のデータを得て、Antioxidants誌に報告した。 また、これまではPGC1αとSRC1ペプチドを用いてCoactivator結合能を測定していたが、新たにCBPとTRAP220についてもデータ取得を行った。Bezafibrate, Fenofibric acid, Pemafibrate, Lanifibranor, Elafibranor, Seladelpar, Saroglitazar, Pioglitazoneで比較し、PPARサブタイプそしてリガンドによっては、Coactivatorの選択性が異なることを明らかにした。これについてはBiomedicines誌に報告した。 CoactivatorとCorepressorのPPAR結合状態を同時に測定するためのFRET条件についても検討を行い、アゴニストの添加によりCorepressorが乖離し、代わりにCoactivatorが結合することを同じ溶液内で測定可能となった。 NAFLD治療効果の比較では、C57BL/6Jマウスに超高脂肪(32%)/1.5%コレステロール/0.6%コール酸配合餌と1%シクロデキストリン含有水を与えてNASH様病態を作成した。その結果、脂肪変性・炎症・線維化を組織学的解析により観察することができた。
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