研究課題/領域番号 |
22K15051
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
古池 美彦 分子科学研究所, 協奏分子システム研究センター, 助教 (70757400)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 概日リズム / ATP加水分解 / リン酸化 / アロステリー |
研究実績の概要 |
時計タンパク質KaiCは、C1およびC2という2つのドメインで異なる二種類の化学反応を触媒し、シアノバクテリアの概日リズムを生み出している。C1はアデノシン3リン酸(ATP)を加水分解することでリズムの周期を決定しており、C2はS431・T432をリン酸化・脱リン酸化するサイクル反応によってリズムを生み出している。C1とC2は触媒反応に応じてそれぞれ構造変化を繰り返し、しかもそれを互いに協同的に相互作用させることで、分子全体にわたるアロステリックな運動を生み出しており、これが概日リズムの起源となっている。 異なる触媒作用をもつ2つのドメインにまたがる複雑なアロステリック運動を捉えるために、KaiCに結合して作用する低分子化合物をスクリーニングした。KaiCの概日リズムを速めたり(短周期化作用)、遅くしたり(長周期化作用)、止めてしまう(阻害作用)化合物を見出した。これらの化合物は、上記のC1-C2アロステリック運動のいずれかの過程に選択的に作用していると考えられる。こうした化合物の作用メカニズムを明らかにし、C1-C2アロステリック運動の主要なステップを捉えるために、スクリーニングによって得られた化合物を添加したKaiC結晶を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スクリーニング過程において、C1-C2アロステリック運動を捕捉する低分子化合物を複数見出せた。さらにこれらを加えたKaiC結晶を調製することができた。当初計画に沿うスケジュールで研究進捗があった。
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今後の研究の推進方策 |
得られたKaiC結晶にX線を照射して構造解析を進め、周期変調作用・阻害作用のある化合物の結合部位を特定し、C1-C2アロステリック運動の鍵となる構造領域を特定する。また、これら化合物がATP加水分解、リン酸化、脱リン酸化のどの過程に最も強く作用するのかを生化学的に同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた化学試薬の生産が停止し、納品時期が大幅に変更されることが判明したため。次年度に当該試薬の購入に充てる予定となっている。
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備考 |
SPRUC 2022 Young Scientist Award、日本生物物理学会 若手奨励賞、日本結晶学会進歩賞、化学情報協会 JAICI賞、「細胞のなかで時を刻むタンパク質の1日に密着!―体内時計を駆動する原子レベルのメカニズム」港区立みなと科学館・気象庁・自然科学研究機構 連携講座 2022年10月
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