研究課題/領域番号 |
22K15054
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
村上 千明 千葉大学, 大学院理学研究院, 特任助教 (20908909)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ホスホリパーゼC / ジアシルグリセロール / スフィンゴミエリン合成酵素 / スフィンゴミエリン合成酵素関連タンパク質 / ホスファチジルコリン特異的ホスホリパーゼC / PHOSPHO1 / ジアシルグリセロールキナーゼ / 脂質生物学 |
研究実績の概要 |
ホスホリパーゼCはグリセロリン脂質を加水分解し,生理活性脂質のジアシルグリセロール(DG)を産生する.最近,我々はホスファチジルイノシトール(PI),ホスファチジルコリン(PC)やホスファチジルエタノールアミン(PE)等の複数種のリン脂質を水解しDGを産生するmulti-glycerophospholipid PLC hydrolase(MG-PLC)を発見した.一方,哺乳類PI-PLC,PE-PLCやPC-PLC活性は脂肪肝,ガンや動脈硬化症等と連関することが報告されているが,今までこれらの酵素の遺伝子が不明であった.本研究でMG-PLCが上記疾患と連関するのか否か,生理的意義に迫ることを目的としている. 当該年度は,次の5つの研究成果が得られた.①MG-PLCのスプライスバリアントを2種発見し,当該酵素はDGキナーゼδと相互作用することを見出した.②MG-PLCノックアウトマウスを作製し,個体レベルにおける生理的意義の解析の用意を進めている.③MG-PLC以外の未知のPLCを探索・同定を実施するために,哺乳類細胞よりワンステップで高純度にリコンビナントタンパク質の精製を可能とする実験系を構築した④MG-PLCの触媒部位を指標にホモロジーサーチによるPLCの探索し,候補タンパク質を精製し,PLC活性を調べた結果,PC-PLC活性を示す膜タンパク質を2種(投稿準備中),PC-/PE-PLC活性を示す細胞質タンパク質を1種発見した(2023年度中に公表予定).⑤同定した新規PLCがDGキナーゼと相互作用すること(DGK)を発見した(投稿中).すなわち,当該酵素は細胞内でDGを産生し,近接したDGKにDGを供給することで新規DGシグナル伝達経路を形成する可能性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MG-PLCの機能解析を実施するための研究ツール(ノックアウトマウス等)の作製は予定通り進行している.さらに,MG-PLCの配列を指標に新規PLCを3種同定した他に,MG-PLCのスプライスバリアントを発見するなど,予期せぬ発見も複数あり,予想以上にPLCは多様であることが示唆された. したがって,おおむね順調に研究は進展している他に,新たな研究展開が期待できると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り,計画通りに進捗がある他に予期せぬ発見もあったことから,次の通り研究計画を修正する. ①当初計画通り,非アルコール性脂肪性肝疾患がMG-PLCと連関するのか否かをノックアウトマウスを用いて調べる.②新発見の哺乳類PLCの酵素学的性質をin vitroで調べ,当該タンパク質が細胞内でPLC活性を有するのか,当該遺伝子の過剰発現または発現抑制によって細胞内のDG量に影響があるのか否かを調べる.③MG-PLCおよび同定した新規PLCの遺伝子を指標に他のPLCの探索を実施し,候補タンパク質のPLC酵素活性を調べることで新規PLC酵素群の同定を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は,遺伝子改変マウスの作製を主に行っており,次年度と比較して支出が少ない.また,予想以上に研究が進展していることから,次年度以降に研究支援員を雇用することで対応する. したがって,次年度は人件費が発生する他に,動物実験を実施することからより多くの研究費を要するため,当該年度の未使用の予算を次年度に使用することは妥当であると考える.
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