動物の生殖組織特異的に発現する小分子RNAであるpiRNAは、Piwiタンパク質と複合体を作りトランスポゾンの発現を抑制する。piRNA経路に異常が生じると、多くのモデル生物で不妊となる。この経路に関わる遺伝子としてFKBP6が知られ、そのショウジョウバエオルソログShutdown(Shu)も卵巣体細胞(OSC)におけるpiRNA生合成に必須である。OSCのpiRNA生合成経路では、ShuとPiwiが結合し、非膜系オルガネラYb bodyに移行する。ShuはPiwiをYb bodyにリクルートするものの、自身はYb bodyに留まらずに離脱する。Yb body内でRNAと結合したPiwiは、Yb bodyを離れてミトコンドリアへ移行して成熟化を受ける。本研究では、ShuがYb bodyから排除される機構と排除される生理的意義を解明すること、および、排除機構を利用した手法による新規トランスポゾン抑制因子の同定を目的とした。 本研究の結果、Shu同士の反発がYb bodyからの離脱に重要であることが明らかになった。また、この離脱が、Piwiのミトコンドリア移行に必須であることも明らかにした。Yb body特異的タンパク質標識技術の確立に向けて必須な、Shu同士の反発に働く領域の同定に至ったほか、新規トランスポゾン抑制因子を発見しその解析も進行している。さらに予期せぬ成果として、piRNA生合成経路におけるフィードバック制御の存在や、ヒト無精子症で報告された変異がShuの離脱を妨げることも見出した。
|