研究課題/領域番号 |
22K15061
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
宮崎 亮次 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (30827564)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 新生ポリペプチド鎖 / in vivo光架橋法 / VemP / Secトランスロコン / PpiD / YfgM / DsbA / AlphaFold 2 |
研究実績の概要 |
細胞内のタンパク質は、適切な場所に配置され、機能的構造に折り畳まれることで機能する。この成熟過程は、翻訳後にリボソームから離れた後のみならず、翻訳途上のリボソームと結合した新生ポリペプチド鎖の状態でも進行する。近年、新生鎖の構造状態や相互作用を理解することはさらに重要になりつつあるが、生細胞内で迅速に起こる新生鎖の動態変化を解析した研究は少ない。特に、タンパク質膜透過装置Secトランスロコンなどにより生体膜を透過途上の新生鎖に関しての研究はさらに限られている。 本研究では、膜透過途上の新生鎖状態が安定なVemPをモデル基質とし、in vivo光架橋法によってVemPとSecトランスロコンやPpiD等の関連因子との細胞内での相互作用様式やその迅速な動態変化を解析し、新生ポリペプチド鎖の膜透過機構を解明することを目的とする。 当該年度は、VemP新生鎖と相互作用する機能未知の膜タンパク質PpiDに着目して、その役割を調べた。PpiDの全領域を対象としたin vivo光架橋解析により、PpiDがパートナー因子であるYfgMやSecYEGトランスロコンだけでなく、膜透過駆動モータータンパク質SecDFやジスルフィド結合導入酵素DsbAとも相互作用することを見出した。詳細な架橋解析とAlphaFold 2を用いた解析からPpiDはそれらの因子と同時に相互作用し、細胞内で巨大なタンパク質を形成することを示唆する結果を得た。また、 PpiDの基質相互作用部位も同定し、VemP等の新生鎖が膜透過時に相互作用する因子群を同定しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タンパク質の多くは、翻訳途上時のリボソームと結合した新生鎖の状態で様々な因子と相互作用し、それにより成熟していく。そのため、タンパク質の成熟過程を理解するには、細胞内での新生鎖の迅速な相互作用動態を理解することが重要である。 本研究は、細胞内で翻訳が安定に停止するVemPをモデル基質とし、in vivo光架橋法を用いてVemP新生鎖の相互作用因子の同定とそのダイナミックな相互作用動態の解析を行い、それを通じて、細胞内で新生ポペプチド鎖の迅速な相互作用動態を解析できることを実証するものである。 当該年度は、VemP新生鎖と相互作用する機能未知の膜タンパク質PpiDに着目して、その役割を調べた。PpiDの全領域を対象としたin vivo光架橋解析により、PpiDがパートナー因子であるYfgMやSecYEGトランスロコンだけでなく、膜透過駆動モータータンパク質SecDFやジスルフィド結合導入酵素DsbAとも相互作用することを見出した。さらに、PpiDを介してそれらの因子が寄り集まり、細胞内で巨大なタンパク質を形成することを示唆する結果を得た。また、PpiDの基質相互作用部位も同定し、VemP等の新生鎖の膜透過に働く因子に関する基盤的な情報を得つつある。 以上のように、本年度はおおむね順調に研究が進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究では、VemPと相互作用する膜タンパク質PpiDに焦点をあてて研究を進め、SecDやDsbA等のPpiDと相互作用する因子やPpiDの基質結合部位を同定した。 今後はVemPをモデル基質として利用し、VemPがそれらの因子とどのように動的に相互作用していくかを解析し、VemP等の新生鎖が膜透過する機構を詳細に解析する。また、PpiD/YfgM複合体は実験的な構造が分かっていないため、その構造やSecYEGトランスロコンや膜透過促進因子SecDF、DsbA等との複合体の構造決定を試みる。 さらに、PpiDがDsbAと相互作用し、膜透過途上の新生鎖のジスルフィド結合導入を促進する可能性が示唆された。そこで、PpiDとDsbAとの機能連携を遺伝学的・生化学的に調べていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により物品の入手が困難となっている。繰越した予算で物品を購入し研究を遂行する。
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