研究実績の概要 |
申請者は2022年度においてヒト細胞内の恒常性維持に必須であるRabタンパク質の新規制御機構について研究を行い、これを明らかにした。 ヒト細胞は脂質膜で構成される小胞によって細胞内の物質、情報を輸送しており、この膜小胞による輸送はメンブレントラフィックと呼ばれる。申請者はこれまでの研究において、メンブレントラフィックの必須因子であるRabタンパク質がグアニンヌクレオチドとの結合依存的に分解されることを世界で初めて明らかにした(Takahashi et al., EMBO Rep, 2019)。一方、グアニンヌクレオチドと結合したRabタンパク質を分解する因子や分解の意義については解明されていなかった。 そこで申請者は細胞内のタンパク質分解因子とRabタンパク質の結合スクリーニングを行い、一つの複合体を形成するタンパク質群がRabタンパク質とグアニンヌクレオチド依存的に結合することを明らかにした。申請者が同定したRab結合タンパク質、BAG6、RNF126、UBQLN4はユビキチンと呼ばれるタンパク質修飾因子を特異的に認識し、ユビキチン修飾されたタンパク質を分解酵素まで誘導する機能をもつ。申請者はRabタンパク質がグアニンヌクレオチドとの結合依存的にユビキチン修飾されて分解されること、その分解がBAG6、RNF126、UBQLN4依存的に行われることを明らかにした。また、Rabタンパク質の分解を阻害すると、メンブレントラフィックによって形成される細胞小器官、一次繊毛の形成が見られなくなることを示した。 以上の結果をもって、申請者はこれまで明らかにされていなかったRabタンパク質の分解因子や分解の意義を解明し、その成果を海外の科学専門誌iScience誌にて発表した(Takahashi et al., iScience, 2023)。
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