研究実績の概要 |
申請者は2023年度においてヒト細胞内の物質輸送機構、メンブレントラフィックに必須なRabタンパク質の新規制御機構を明らかにした。 ヒト細胞は脂質膜で構成される小胞によって細胞内の物質、情報を輸送しており、この膜小胞による輸送はメンブレントラフィックと呼ばれる。申請者はメンブレントラフィックの必須因子であるRabタンパク質がグアニンヌクレオチドとの結合依存的に分解されることを世界で初めて明らかにした。一方、Rabタンパク質分解に必要な因子の同定やなぜRabタンパク質が分解される必要があるのか、分解されなければどのような異常が細胞に生じるのかなどの疑問は解消されていなかった。 そこで申請者は2022年度より開始したタンパク質分解因子とRabタンパク質の結合スクリーニングを完遂し、一つの複合体を形成するタンパク質群がRabと特異的に結合することを明らかにした。また、申請者は同定したRab結合タンパク質群、BAG6、RNF126、UBQLN4が働かなくなった際に、細胞内Rabタンパク質の動態や、Rabによって制御されるメンブレントラフィックがどのように変化するか検証した。 その結果、BAG6を含む分解因子が機能しなくなると、細胞内のRabタンパク質の不活性型が増加することを突き止めた。さらに、Rab依存的なメンブレントラフィックによって形成される細胞小器官、一次繊毛が、不活性型Rabの過剰な蓄積によって形成されなくなること、同様の形成不全がRab分解因子の機能阻害によってもみられることを明らかにした。 以上の結果をもって、申請者はこれまで明らかにされていなかったRabタンパク質の分解因子や分解の意義を解明し、その成果を海外の科学専門誌iScience誌 にて発表した(Takahashi et al., iScience, 2023)。
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