研究課題
スフィンゴ糖脂質合成酵素は主にゴルジ体に局在し、多様な種類の糖脂質合成を担う。糖脂質の合成経路や酵素の機能が詳細に明らかにされているのに対し、酵素が小胞体で合成された後にどの様にして働く場のゴルジ体へ輸送され安定してゴルジ体に留まるのかは未解明である。申請者は代表的な糖脂質であるガングリオシドGM3を合成するGM3合成酵素(GM3S)において細胞質領域N末端側に小胞体からゴルジ体への搬出シグナル(R/K-based motif)を、ゴルジ体から小胞体への逆行輸送シグナル(R-based motif)をもつことを見出した。さらにマウスGM3Sを安定発現させたCHO細胞を用いた解析により、GM3SはN末端領域の長さが異なる複数のアイソフォームが存在し、細胞内輸送シグナルの有無によって異なる細胞内局在や細胞内安定性を付与されることで複数のアイソフォームが協働して安定した糖脂質生合成を行っている可能性を示唆した。本研究では、ヒトGM3Sが逆行輸送を制御する塩基性アミノ酸クラスター(R11、R12)をもつにも関わらず酵素の一部が小胞体への逆行輸送が行われずにゴルジ体に留まることを見出し、逆行輸送効率低下の原因となるアミノ酸配列を新たに同定した。
3: やや遅れている
当初の計画に従ってヒトGM3Sの細胞内局在を観察したところ、予想外にこれまでマウスの知見で得られていた同酵素の細胞内局在と明らかな差が見られた。この差を生じさせるアミノ酸配列について検討した結果、輸送効率を低下させるアミノ酸を同定することが出来た。今後は当初の研究計画に従って、GM2S、SMSの局在制御について解析を進める予定である。
当初の研究計画に従って、次年度は主にGM3S、GM2S、SMSのERES局在の比較を行い、小胞体搬出ゾーンの解析をする予定である。さらに、小胞体搬出を担うCOPII小胞の構成成分Sec24の4つのパラログであるSec24A/B/C/DそれぞれのKO細胞を樹立し、GM3S、GM2S、SMSの輸送に関わる分子を明らかにする予定である。
コロナ禍による学会参加旅費の削減および研究計画の遅れに伴い試薬類購入が後ろ倒しになったことにより次年度使用額が生じた。今年度は当初の研究計画に添った試薬等の購入、対面での学会参加となる予定である。
すべて 2023 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 備考 (1件)
Methods Mol Biol
巻: 2613 ページ: 101~110
10.1007/978-1-0716-2910-9_9
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https://www.tohoku-mpu.ac.jp/medicine/lab/medical_education_center/