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2022 年度 実施状況報告書

人工的代謝ネットワークを用いた静止相における細胞代謝ダイナミクスの研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K15069
研究機関東京大学

研究代表者

姫岡 優介  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (70903160)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2027-03-31
キーワード力学系 / 化学反応 / ネットワーク / システム生物学
研究実績の概要

本研究の目的は、微生物が静止相などにおいて示す「長い時間スケール」が、(個々は非常に短い時間スケールを持つ)化学反応ダイナミクスからどのように出現するかを、ボトムアップ手法を主に用いて明らかにすることである。「長い時間スケール」は微生物細胞の示す記憶様の現象や、抗生物質耐性にも関係があるということが実験的に報告されており、「長い時間スケール」がどのように生じるのかを解明することは、微生物学といった基礎研究のみならず、応用分野も含めて広い分野へのインパクトを与え得るものであると考えられる。微生物のもつ実際の反応経路を網羅的に調べることでこの問いに迫るというトップダウンアプローチだけではなく、本研究のようにボトムアップによるアプローチを採用することで、存在する代謝反応データにバイアスされないような、ネットワークとして一般的な性質が得られると期待される。
初年度は「人工的化学反応ネットワーク」という、2体1反応のみで構成された非常に単純な化学反応ネットワークのクラスを構築し、その構造的特徴とネットワーク上で起こる化学反応ダイナミクスの間の関係を網羅的に調べた。人工的化学反応ネットワークは、非常に単純なルールで構成されるにもかかわらず、定常状態への緩和に①指数緩和、②指数緩和+プラトー、③べき緩和という3通りの定性的に異なるダイナミクスを示すことが分かった。
緩和ダイナミクスとネットワーク構造の関係を調べた結果、化学反応量論係数行列(反応ネットワークの構造を表す行列)の①ランク、②保存量、そして③Stoichiometric Coneと呼ばれる量が緩和の定性的特徴を決定しているらしいことが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

人工的代謝ネットワークの構造的特徴と、そのネットワーク上における化学反応ダイナミクスの定性的特徴に関して本年度は理解を深めることが出来た。これは当初の想定以上の進捗である。
また、人工的代謝ネットワークを用いた理論研究を、申請者が所属する、東京大学 生物普遍性研究機構の『全学自由ゼミナール 生命の普遍原理に迫る研究体験ゼミ』において2名の学部学生と共に行っている(2件学会発表済み)。これら2つの研究課題は化学反応ダイナミクスの研究ではなく、フラックスバランス解析などを用いた静力学的解析ではあるが、ネットワーク構造と化学反応の定常状態の間にどのような関係があるのかを明らかにするうえで重要な研究であると考えられる。

今後の研究の推進方策

次年度においては、人工的代謝ネットワークの構造的特徴とダイナミクスの関係を、化学反応ネットワーク理論などを援用してより数学的に詳細に調べていく。また、申請者は別課題で「長い時間スケールの出現」を、実際の大腸菌代謝経路のモデリングを通じて調べる、トップダウンアプローチの研究も行っており、その成果として「長い時間スケール」を出現させるためのミニマルモデルが得られた。このミニマルモデルと同じ数、あるいはより少ない代謝物質・代謝反応をもつネットワークを全探索することによって、「長い時間スケール」を出現させるネットワーク構造を列挙することが可能であると考えられる。その解析を通じて、「長い時間スケール」を出現させるために必要なネットワークの構造の解明を目指す。
また、昨年度より継続している学部学生との共同研究については、本人の意向を聞きながら学生の学業に影響が出ない範囲で継続する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] Niels Bohr Institute(デンマーク)

    • 国名
      デンマーク
    • 外国機関名
      Niels Bohr Institute
  • [国際共同研究] National Centre for Biological Sciences(インド)

    • 国名
      インド
    • 外国機関名
      National Centre for Biological Sciences
  • [雑誌論文] Structural determinants of relaxation dynamics in chemical reaction networks2022

    • 著者名/発表者名
      Himeoka Yusuke、Kirkegaard Julius B.、Mitarai Namiko、Krishna Sandeep
    • 雑誌名

      bioRxiv

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1101/2022.05.25.493374

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Structural determinants of relaxation dynamics in a class of ligation-cleavage chemical reaction networks2023

    • 著者名/発表者名
      Sandeep Krishna
    • 学会等名
      The 45th Indian Biophysical Society Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] 人工的な代謝ネットワークの緩和特性とネットワーク構造2022

    • 著者名/発表者名
      姫岡優介
    • 学会等名
      日本物理学会第 77 回年次大会
  • [学会発表] 代謝ネットワークの構造によるジェネラリスト・スペシャリスト戦略の出現2022

    • 著者名/発表者名
      新美倫太郎
    • 学会等名
      日本物理学会第 77 回年次大会
  • [学会発表] Bow-tie型代謝ネットワークの出現条件2022

    • 著者名/発表者名
      伊與田裕大
    • 学会等名
      日本物理学会2022秋季大会

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公開日: 2023-12-25  

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