研究実績の概要 |
軸糸内輸送はdynein-2とkinesin-2が集合体を成したIFT-trainと呼ばれるものによって行われる。kinesin-2が細胞質側から鞭毛・繊毛の先端方向への輸送を担い、dynein-2が逆方向の輸送を担う。この時、軸糸内部の微小管骨格はそれぞれがA管とB管からなるダブレット微小管を形成している。これまでの研究から、kinesin-2がB管上、dynein-2がA管上を運動することが知られていた。だが、この微小管選択機構については明らかにされてこなかった。私は、B管がA管に比べて、微小管の翻訳後修飾が多いことに注目した。つまり、微小管の翻訳語修飾がkinesin-2の運動を促進、または、dynein-2の運動を阻害することによって、dynein-2とkinesin-2の微小管選択が行われているのではないかと考えた。そこで、まずはdynein-2と微小管翻訳後修飾の関係性について調べることとした。
理論的に微小管表面に翻訳語修飾を施し、その表面上でdynein-2の挙動を確認した。具体的にはデチロシン化・ポリグルタミン酸化・ポリグリシン化をそれぞれ、または混ぜた状態で付与した系を作成した。その結果、特にポリグルタミン酸化がdynein-2の歩行運動を著しく阻害している様子が確認された。これらの結果はScientific Reportsに掲載された。
Kubo, S., Bui, K.H. Regulatory mechanisms of the dynein-2 motility by post-translational modification revealed by MD simulation. Sci Rep 13, 1477 (2023). https://doi.org/10.1038/s41598-023-28026-z
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