研究課題
短い染色体は長い染色体に比べてGC含量と遺伝子密度が共に高いという特徴を有し、短い染色体に存在する遺伝子もいくつかの特異な配列特性を有している。これらの特徴は染色体の核内動態と遺伝子の配列特性とが相互に関連している可能性を想起させるが、脊椎動物の網羅的にその特徴が保存され、統計学的な有意差があるかどうかまでは調べられていなかった。そこで本研究では、進化速度が遅く、保有する染色体本数が多く、その長さの分布が多様なトラフザメとジンベエザメを対象に、その全ゲノム配列情報を取得・決定し、種間比較に基づく染色体ごとの配列解析と統計検定を実施した。本研究より、トラフザメとジンベエザメで、染色体レベルの繋がりを有した全ゲノム配列情報がそれぞれ整備され、その情報は公共データベースに登録された。我々はトラフザメとジンベエザメの染色体を長さと塩基配列の特徴からeMAC、eMID、eMICという3つのグループに分け、それぞれの特徴付けを詳細に行った。結果、GC含量、遺伝子密度、同義置換率、単純反復配列が染色体長との間で負の相関があり、遺伝子長に関しては正の相関があることが示され、その関係性は一部例外を除きほとんどの有顎脊椎動物(顎口類)で保存されていることも明らかにした。また、eMICという短い染色体のグループに属する一部の染色体は、ニワトリとスポッテッドガーの有するマイクロ染色体と起源が異なることを示した。加えて、トラフザメとジンベエザメの性染色体であるX染色体を配列レベルで初めて同定し、X染色体の偽常染色体領域に動物の胚発生の初期において組織の前後軸および体節制を決定する遺伝子の一つであるHoxC遺伝子群が連鎖していることも初めて同定した。
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Proceedings of the National Academy of Sciences
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