研究課題/領域番号 |
22K15095
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
二宮 小牧 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (30922950)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 細胞集団移動 / 上皮細胞 / カルシウムイオン / アクチン細胞骨格 / Rho GEF / 組織形成 / ショウジョウバエ |
研究実績の概要 |
細胞は、運動・形態・増殖などの動態を自律的に制御するメカニズムを持つ。一方で、組織形成の実現には、細胞同士が協調することが重要であるが、個々の細胞が周囲と連携しながら秩序を形成するメカニズムには未だ不明な点が多い。細胞の動態制御には、時空間的に緻密な細胞骨格の再構築が伴う。本研究では、培養細胞を用いた詳細な分子経路の解析、およびショウジョウバエの組織形成過程のイメージング解析を主軸として、個々の細胞内の骨格再構築を協調的に制御するメカニズムにおいてカルシウムイオンの役割に注目している。 本年度は、哺乳類の培養上皮細胞において、細胞間接着でのアクチン骨格の構築に必要なRho GEFであるPLEKHG4Bが、細胞内へのカルシウムイオン流入に応答して細胞間に集積してくることを見出した。加えてメカノイオンチャネルの活性を阻害するとPLEKHG4Bの局在が消失することも分かった。詳細な分子メカニズムを生化学的に解析し、アネキシンA2との結合が必要であることを明らかにし、その結合ドメインを同定した。以上の結果から、メカノイオンチャネルを介した細胞内へのカルシウムイオンの流入によりPLEKHG4BがアネキシンA2と共に細胞間に集積することで、細胞間接着のアクチンが増強されるメカニズムを見出した。 更に、並行して、ショウジョウバエの雄性外生殖器の形態形成に注目した解析も実施した。雄性外生殖器の形成過程には上皮細胞集団の移動が伴うが、いくつかのカルシウムイオンシグナル関連分子の発現抑制によってこの移動が損なわれることを見出した。今後はin vivo解析に重きを置き、多細胞集団の連携メカニズムの普遍原理の理解を目指した研究を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は主に哺乳類の培養上皮細胞において、細胞間接着の形成や維持に必要な細胞間のアクチン構造が、メカノイオンチャネル依存的なカルシウムイオンの流入に応答して制御されていることを示し、その分子経路を明らかにすることができた。本成果は現在論文にまとめて発表する準備をしている。更にはショウジョウバエの組織形態形成をモデルとして、上皮細胞においていくつかのカルシウムイオン制御分子を発現抑制すると形態形成に異常が出ることを見出した。またin vivoライブイメージングによるカルシウムイオンシグナルの解析は、生きたまま個体を解剖する技術や詳細な撮影条件の最適化に時間を要しているが、より安定したイメージング条件の確立できつつある。次年度には詳細な解析ができると考えている。以上より、本研究は順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画から大きな変更はなく、今後はショウジョウバエの外生殖器の形態形成をモデルとしたin vivo解析に主軸を置き、細胞集団移動を可能にする細胞同士の協調性の獲得や維持におけるカルシウムイオンの役割を解析する。本年度は、外生殖器の形成に伴う細胞集団移動に関わるカルシウムイオン制御分子が同定できたため、これらの詳細な役割を解析する。in vivoライブイメージングによるカルシウムイオンシグナルの解析は、より安定したイメージング条件を確立し、これまでに観察できている特徴的な発生と伝播パターンの詳細な解析を行う。最終年度であるため、得られた結果を論文にまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、当初に予定していた国外への学会参加がCovid19流行の影響で参加を見合わせたため旅費の支出が少なくなった。また試薬作成の工夫などにより物品費を削減することに繋がった。次年度使用額を利用して、研究計画及び研究発表は予定通り進める予定である。
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