研究課題/領域番号 |
22K15109
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
田中 真仁 国立遺伝学研究所, 遺伝メカニズム研究系, 特任研究員 (20898192)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | マウス初期胚 / 核膜 / 力学計測 / ライブイメージング |
研究実績の概要 |
核膜の変形が持つ胚発生における機能を明らかにするために、今年度は1)マウス初期胚の核膜の物性解析と2)核膜の変形を生み出す分子の同定を行い、核膜がいかなる物性を有し、またどのような力によって変形しているのかを調べた。さらに、3) 核膜変形操作を行い、人為的に核膜を変形させた後の胚発生を調べた。具体的な研究実績を以下に記述する。 1)蛍光プローブで標識した核膜の胚発生に伴う形状変化を高解像ライブイメージングで観察した。その結果、2細胞期胚の核膜は大きく変形したり、その周辺の構造が乱れたりして、1と4細胞期胚の核膜とは異なる形状を示した。また、独自開発したガラスキャピラリー法を使って胚発生に伴う核膜の硬さと粘弾性の変化を測定した。その結果、2細胞期胚の核膜は1、4細胞期胚の核膜と比べて非常に柔らかく、また可塑的であることが分かった。 2)次に核膜の変形に関与すると予想した候補分子を薬剤で阻害した2細胞期胚と未処理の2細胞期胚の核膜の変形量と比較して、核膜の変形を生み出す分子を調べた。その結果、2細胞期胚の核膜の変形に寄与する分子の1つを明らかにした。また1)の核膜の硬さ計測と薬剤阻害実験を組み合わせることで、2細胞期の核膜の軟化を制御する分子機構についても明らかにした。 3)さらに1)のキャピラリー法を使って1細胞期胚と2細胞期胚の核膜を人為的に変形させて、その後の胚の発生を調べた。その結果、核膜を人為的に変形させた2細胞期胚では、1細胞期胚に比べて胚盤胞まで発生が進む割合が大幅に減少した。このことから2細胞期胚の核膜を人為的に変形させると胚発生に悪影響を及ぼすことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の目標であったマウス初期胚核膜の物性解析と変形に起因する分子の同定が予定通り行うことができたため。また、マウス初期胚核膜の物性を解析するだけではなく、核膜の物性を制御する分子機構の同定や核膜の変形の胚発生の影響を調べることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
確立した核膜の硬さ計測法や高解像ライブイメージングを用いて2細胞期特異的な核膜の構造や物性をさらに解析する。今年度に発見した核膜の変形や硬さを制御する分子がいかにして2細胞期で機能しているのかその詳細な分子メカニズムについてさらなる解析を進めていく。2細胞期胚の核膜を人為的に変形させるとなぜ胚発生に悪影響を及ぼすのか、その原因についても調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画が順調に進んだことで当初の計画よりも人件費やその他の経費を節約することができたため。実験に必須な消耗品の購入に充てる。
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