研究課題/領域番号 |
22K15135
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松本 光梨 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (10914153)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 胚発生 / 先端成長 / ライブイメージング / 細胞内動態 / シロイヌナズナ |
研究実績の概要 |
受精卵は、極性化とその後の非対称分裂を経て、上下に二つの娘細胞を作り出す。上側にある細胞は、幹細胞であり、将来、葉や根といった器官を作り出す。一方、下側の細胞は母組織からの栄養供給を担う。娘細胞の違いを生み出す受精卵の非対称分裂は、植物の形作りの原点といえるが、その過程をリアルタイムで追跡することは難しく、細胞内の動態は長らく不明であった。代表者らは、近年確立されたシロイヌナズナ受精卵の高精細ライブイメージング技術を用いた解析から、受精を契機として、受精卵は上側へと細胞伸長すること、また細胞伸長とともに核やオルガネラが極性移動することを見出した(Kimata et al, 2016; Matsumoto et al, 2021)。このことから、受精卵では細胞伸長と連動した極性化機構が存在し、それが非対称分裂および娘細胞の形状や性質の違いの確立に重要であると考えた。そこで代表者は、まず受精卵伸長の仕組みを明らかにすることにした。従来のライブイメージング技術と、新たに開発された画像解析技術を組み合わせた定量的解析により、受精卵が先端成長という、特殊な伸長様式をとることを示した。次に、他の先端成長する細胞との類似点や相違点を明らかにするため、様々なマーカーや阻害剤を駆使したライブイメージングを行った。例えば、花粉管や根毛といった先端成長細胞は、伸長時に先端から発振されるカルシウム(Ca)振動が伸長と密接に連動する。代表者は、受精卵の伸長時においても、Ca振動が先端(上部)から発振し、伸長に重要な役割を果たすことを明らかにしたが、他の先端成長細胞で見られるような伸長の速度変化との明確な連動は見られなかった。現在、この違いの原因に迫るため、受精卵における先端成長の駆動力の解明を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで受精卵のライブイメージング解析では、実験の特性上、受精卵の形態変化を経時的かつ定量的に捉えることが難しかった。今年度は、新たに開発された画像解析法を駆使したことで、伸長の変化を容易に解析できるようになり、研究が大きく前進した。今後、この技術と各種マーカーを組み合わせることで、受精卵の極性化における先端成長の役割の解明に期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
受精卵には、先端にリング状構造をとる微小管(微小管リング)が配向し、伸長に重要な働きを果たすことが知られている(Kimata et al, 2016)。この微小管リングが、先端成長の駆動力であるかを明らかにすべく、微小管リングが受精後どのようにして形成され維持されるのかや、Ca振動との関係性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の物品費および旅費については、別の研究費から支出したため、本研究費の使用が抑えられた。次年度は、顕微鏡観察に必要な消耗品に加え、実験機材の購入に使用する。
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