• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実施状況報告書

1細胞オミクスによる多様な植物異形細胞の機能解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K15136
研究機関横浜市立大学

研究代表者

山本 浩太郎  横浜市立大学, 理学部, 助教 (60888535)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードアルカロイド / 異形細胞 / 一細胞メタボロミクス / 薬用植物 / チョウジソウ / アルカロイド細胞 / 一細胞オミクス / ニチニチソウ
研究実績の概要

植物は、昆虫や草食動物などの捕食者に対する防御物質として、カフェインやモルヒネのような二次代謝産物を生産している。これらの二次代謝産物の中には、薬、嗜好品、さらには染料やゴムなど、人に有用な物質が数多くある。植物の二次代謝には、一連の生合成が一つの細胞内で完結せず、複数の細胞を横断して行われるものがある。キョウチクトウ科ニチニチソウでは、異形細胞と呼ばれる他の細胞とは異なる形態である細胞が、細胞間を横断して行われる二次代謝の一翼を担っている可能性が示唆されているが、その役割・発生過程・類似性・二次代謝との関連性などは未だによくわかっていない。
本研究では、1細胞生物学実験手法を植物種ごとに改良して、多様な植物における異形細胞とアルカロイド代謝の関係性を明らかにしていく。さらに、代謝物による異形細胞の分類を行う。
日本原産薬用植物であるキョウチクトウ科チョウジソウの細胞を蛍光顕微鏡で観察していると、キョウチクトウ科ニチニチソウと似た蛍光性物質を蓄積する異形細胞が存在していることを発見した。本年度は、一細胞メタボロミクス手法を改良して、このチョウジソウの各細胞種や異形細胞に含まれるアルカロイドを明らかにしてきた。その結果、ニチニチソウと同様に、チョウジソウでもアルカロイドを異形細胞に蓄積していることが明らかになった。また、チョウジソウのトランスクリプトームデータを解析した結果、既知のアルカロイド生合成酵素遺伝子のオーソログなど二次代謝に関連のある遺伝子の候補が得られてきた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

興味深い異形細胞が観察できたキョウチクトウ科チョウジソウにおいては、組織レベルでのメタボロームデータやトランスクリプトームデータを取得して、アルカロイドの代謝経路図を推測してきた。チョウジソウなどの植物で二次代謝研究をはじめるために、分子生物学・生化学などの実験系の構築を行ってきた。本年度、一過的過剰発現の実験系を立ち上げ、チョウジソウのトランスクリプトームデータを元に、アルカロイド合成酵素をスクリーニングする実験をはじめたところであるため、酵素探索についての研究の進捗は当初の計画よりやや遅れている。

今後の研究の推進方策

現在、チョウジソウのトランスクリプトームデータより、ニチニチソウやインドジャボクにおいて過去に同定されているアルカロイド合成酵素遺伝子のオーソログを複数得てきている。今後これらの遺伝子に関して、異種発現系を用いて、代謝酵素の探索・機能解析を進め、代謝物の蓄積・反応の場となる分化した細胞種が、多様なアルカロイドを生合成するために、どのような役割を果たしているのかを解明する。また、チョウジソウのように興味深い異形細胞を見つけた植物では、一過的過剰発現やノックダウンの実験系の確立に取り組んでいき、植物体内での代謝機構について調べていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

昨年度、チョウジソウの一細胞メタボロミクスのデータを取得していたが、途中で装置の修理期間などがあったため、計画通りにサンプルが測定できず、少し研究が遅れている。本研究計画を遂行するために、次年度使用額が生じた。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Integration of cell differentiation and initiation of monoterpenoid indole alkaloid metabolism in seed germination of <i>Catharanthus roseus</i>2024

    • 著者名/発表者名
      Uzaki Mai、Mori Tetsuya、Sato Mayuko、Wakazaki Mayumi、Takeda‐Kamiya Noriko、Yamamoto Kotaro、Murakami Akio、Guerrero Delia Ayled Serna、Shichijo Chizuko、Ohnishi Miwa、Ishizaki Kimitsune、Fukaki Hidehiro、O'Connor Sarah E.、Toyooka Kiminori、Mimura Tetsuro、Hirai Masami Yokota
    • 雑誌名

      New Phytologist

      巻: 242 ページ: 1156~1171

    • DOI

      10.1111/nph.19662

  • [雑誌論文] Single-cell multi-omics in the medicinal plant Catharanthus roseus2023

    • 著者名/発表者名
      Li Chenxin、Wood Joshua C.、Vu Anh Hai、Hamilton John P.、Rodriguez Lopez Carlos Eduardo、Payne Richard M. E.、Serna Guerrero Delia Ayled、Gase Klaus、Yamamoto Kotaro、Vaillancourt Brieanne、Caputi Lorenzo、O’Connor Sarah E.、Robin Buell C.
    • 雑誌名

      Nature Chemical Biology

      巻: 19 ページ: 1031~1041

    • DOI

      10.1038/s41589-023-01327-0

  • [学会発表] 空間的代謝物イメージングによって見えてきた植物のアルカロイド代謝機構2024

    • 著者名/発表者名
      山本 浩太郎
    • 学会等名
      Trans-scale組織学ワークショップ
    • 招待講演
  • [学会発表] チョウジソウの葉組織におけるアルカロイド代謝物分布解析2024

    • 著者名/発表者名
      山本 浩太郎,森 哲哉,田中 節保,鵜崎 真妃,武田-神谷 紀子,豊岡 公徳,平井 優美
    • 学会等名
      第65回日本植物生理学会年会
  • [学会発表] ニチニチソウにおける細胞の代謝的分化を駆動する新規遺伝子の探索2024

    • 著者名/発表者名
      鵜崎 真妃,山本 浩太郎,三村 徹郎,平井 優美
    • 学会等名
      第65回日本植物生理学会年会
  • [学会発表] 日本原産薬用植物チョウジソウにおけるアルカロイド生合成研究とその研究基盤構築2023

    • 著者名/発表者名
      山本 浩太郎
    • 学会等名
      日本植物学会第87回大会
  • [学会発表] ニチニチソウ種子発芽過程における細胞種特異的なアルカロイド代謝の開始過程の解析2023

    • 著者名/発表者名
      鵜崎 真妃,森 哲哉,佐藤 繭子,若崎 眞由美,山本 浩太郎,村上 明男,豊岡 公徳,三村 徹郎,平井 優美
    • 学会等名
      日本植物学会第87回大会

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi