研究課題/領域番号 |
22K15139
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉成 晃 名古屋大学, 高等研究院, 特任助教 (00829872)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 細胞極性 / 受容体 / シロイヌナズナ |
研究実績の概要 |
植物細胞の細胞表層では、様々なタンパク質が特定の領域に局在することで、その機能を最適化している。根細胞に発現する細胞膜に埋め込まれたトランスポーターや受容体の中には、土壌側や維管束側の異なる細胞膜領域に特異的に局在するものが存在することが知られているものの、植物細胞がどのように位置や方向といった空間情報を処理し、タンパク質の局在性を制御しているのかは明らかになっていない。本研究では、シロイヌナズナを材料とし、細胞層特異的に180度極性方向を変える新規受容体様キナーゼ・DUAL POLAR KINASE 1 (DPK1) の 「極性スイッチ」 の分子機構を明らかにすることで、植物の膜タンパク質が内側/外側の極性ドメインに局在するための普遍的な仕組みの理解を目指す。さらに、極性スイッチを失ったDPK1の機能解析により、DPK1の極性スイッチがもつ生理学的意義を明らかにする。 質量分析によって得られていたDPK1のリン酸化サイトは、キナーゼドメインの特徴的なループ領域に集中していることがわかった。これらのリン酸化サイトのアミノ酸を置換した結果、DPK1の極性局在性は著しく損なわれた。また、このループ領域には多数の酸性アミノ酸が存在し、この中でも特に種間保存性が高い2つのグルタミン酸とアスパラギン酸を塩基性アミノ酸のアルギニンに置換した結果、DPK1の極性局在性が失われた。DPK1の酸性ループ領域は、リン酸化とともに何らかのタンパク質との静電的相互作用の場として機能する可能性がある。共免疫沈降法によって同定されていたDPK1の相互作用因子の候補遺伝子についてのクローニングを行い、局在解析の準備ができたほか、それぞれの遺伝子破壊株を作出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
DPK1のキナーゼドメイン内部の酸性ループ領域に含まれるグルタミン酸とアスパラギン酸が、DPK1の極性局在に必須であることを突き止めた。DPK1の酸性ループ領域と相互作用する可能性があるタンパク質を免疫沈降法で同定し、これらの遺伝子破壊株を用いた実験を行っている。一方、当初計画していた細胞層特異的なリン酸化サイトの同定については、DPK1に融合するタグとしてGFPの代わりに3xFLAG-GFPを用い、再度コンストラクションを行った。現在、シロイヌナズナ形質転換体を作出しているところである。以上、DPK1の相互作用因子を同定するという目的に関しては期待以上の進捗度ではあるものの、DPK1の細胞層特異的なリン酸化サイトの同定という目的については進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
DPK1の細胞層特異的なリン酸化サイトの同定に向けたシロイヌナズナ形質転換体の作出を急ぐ。DPK1の相互作用因子の候補について、逆遺伝学的手法による機能解析やFRETによるin vivo相互作用の検証を行う。DPK1は側根原基に発現するロイシンリッチリピート型受容体様キナーゼであるが、そのリガンドや下流のシグナリング経路についての知見はない。DPK1の生理学的機能を明らかにするため、dpk1変異株やDPK1過剰発現体を用いた比較トランスクリプトーム解析を行い、DPK1がどういった生物学的プロセスに関わるかを突き止める。
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