研究課題/領域番号 |
22K15147
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
元村 一基 立命館大学, 生命科学部, 助教 (50844049)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 生殖 / 花粉管 / 細胞生物学 / シロイヌナズナ / 受精 |
研究実績の概要 |
被子植物の受精過程では、生殖細胞である"精細胞"が花粉管の核である"栄養核"と"雄性生殖単位"と呼ばれる複合体をつくり、花粉管を通って卵細胞まで辿り着く。我々の研究から、精細胞は栄養核とは独立した輸送駆動力を保持し、栄養核と協調的に雄性生殖単位輸送を制御するという、定説を覆す受精様式がみえてきた。そこで本研究ではこの知見を基盤に、MGU輸送の真なる制御機構を明らかにすることを目指している。 研究初年度は、精細胞ペアと栄養核の個別の挙動を顕微鏡観察することから始めた。これまで有性生殖単位という一つの塊として動きを解析されてきたため、個別の挙動にはあまり着目されてこなかったためである。まず栄養核輸送欠損wit1/2花粉管において、精細胞ペアを観察、同時に精細胞輸送欠損SC-cal花粉管において、栄養核を観察した。そしてこれらの挙動を画像解析した。その結果、精細胞ペアと栄養核はそれぞれ単体でも、両方が存在している時と似たような、花粉管先端から一定の距離を保ちながら伸長する花粉管中を輸送されていることが分かってきた。 並行して、花粉管にアクチン阻害剤または微小管阻害剤を処理して雄性生殖単位の挙動の変化をライブイメージングで観察した。その結果、プレリミナリーな結果ではあるものの、アクチンと微小管の制御は精細胞及び栄養核の輸送に影響を与えていることが示唆された。 また、上記の精細胞ペアと栄養核の輸送の欠失現象を利用して、雄性生殖単位全体の輸送が欠失した花粉管を作出して、その受精までの挙動を観察した。その結果、これまでの常識とは異なり、雄性生殖単位の輸送は花粉管の挙動には大きく影響を与えないことが明らかとなった。そこで花粉管を制御する遺伝子発現制御の新たな仮説とともに、上記研究成果を論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
精細胞ペア、そして栄養核の個別の輸送動態という、これまでに見過ごされてきた植物生殖現象のキーファクターについて解析を進め、その動的性質を明らかにできていることが大きな前進であると言える。 それに加えて、有性生殖単位の輸送能が欠失した花粉管を用いた観察実験を行い、花粉管自体のこれまで知られていなかったde novoな遺伝子発現に非依存的 な能力も明らかにすることができた。この現象はこれまでの花粉管の挙動の常識を覆すものであり、この研究成果は国際誌であるFrontiers in Plant Cciences誌をはじめ、Plant Morphology誌にも報告できた。以上のように本研究を基盤とした重要な研究成果を発表することができたことから、当初の計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は引き続き精細胞ペアと栄養核の輸送動態について阻害剤を用いた形態学的な解析をメインに進める。またそれだけでなく、ゲノム編集など遺伝学的アプローチをもって、雄性生殖単位の輸送についての理解を深める予定である。 また平行して、生化学的に有性生殖単位の輸送分子の同定にも挑戦する。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月分の学会参加費と人件費の支払いが事務手続き上次年度にずれ込んだため。
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