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2022 年度 実施状況報告書

重力シグナル伝達因子LZY1による細胞分裂面決定機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K15148
研究機関基礎生物学研究所

研究代表者

川本 望  基礎生物学研究所, 植物環境応答研究部門, 特任助教 (20846414)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2024-03-31
キーワード細胞分裂 / 重力屈性 / 植物発生 / パターン形成
研究実績の概要

植物を含む多細胞生物の発生は細胞分裂の連続から成り立っている。植物の場合、細胞系譜と細胞の位置情報が細胞運命の決定および分化・発生と強く結びついている。このため、細胞運命を決定する様な非対称分裂を行う場合には、細胞分裂の方向、分裂面の位置決定が正確に決定される必要がある。しかしながら、細胞分裂の方向や分裂面の位置決定の詳細な制御機構は大部分が未解明のままである。本研究では、植物の重力屈性に重要な働きを担うLZY1がこの細胞分裂面の方向・位置決定に関わる可能性を見出しており、LYZ1の詳細な解析を通じて、細胞分裂面決定機構の解明を目指すものである。
2022年度はlzy1変異を亢進し、細胞分裂面の位置決定に関わるler変異体の原因遺伝子の同定を目指して、Illumina HiseqXを用いて変異解析を進めたが、現在までにler変異体の原因となる有力なSNPsやT-DNAの挿入を検出できていない。しかしながら、染色体の再編成が生じていることを強く示唆する結果が得られたため、新たにPacBio Sequel II CLRによりゲノムのリシークエンスを行った。この解析から、染色体の転座を検出することができている。現在は、ler変異体の原因遺伝子の同定を目指して、シークエンスデータの統合的な解析を進めている。
また、lzy1 lerを相補するために必要なLZY1ゲノム領域の同定を試みたところ、lzy1の重力屈性異常の相補に十分なゲノム断片ではlzy1 lerを相補するためには不十分であることが判明した。開始コドンから上流約10 kbを用いたLZY1の転写を可視化するレポーターを作成したところ、lzy1 lerにおいて発生異常が見られる花粉において発現が観察された。このことから、LZY1の遺伝子発現制御には細胞種において異なる転写制御領域が必要とされる可能性を見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

Illumina HiSeqX Tenを用いてlzy1変異の亢進変異であるlerの原因遺伝子の探索を進めていたところ、予期せぬことに染色体の再編成が生じている可能性が示唆された。ショートリード型のシークエンスは染色体の構造変化の検出を苦手としており、ロングリード型のシークエンサーを用いて解析を行う必要が生じた。ロングリードシークエンスは先進ゲノム支援に採択され、支援のもと進めており、情報解析も合わせて支援を受けている。このため、当初の予定よりは遅れているものの、遅れを最小限にとどめていると考えている。
一方、lzy1 lerにおける異常を調べるために利用する核と細胞膜を同時標識するマーカー系統や種々の細胞系譜マーカー系統、LZY1の相互作用因子の探索を行うためのTurboIDを利用した形質転換体の作成などは順調に進展し、ほぼ完了した。加えて、LZY1の転写制御は組織や細胞種により異なる転写制御領域が必要なことを示唆する結果を得ており、新たな研究展開に繋がる予備的な結果を得ることができた。
これらを総合して、「やや遅れている」と判断した。

今後の研究の推進方策

2022年度に引き続き、変異体のゲノム解析を進め、lzy1の亢進変異であるler変異体の原因遺伝子の同定を目指す。同定したler変異体はT-DNAの挿入変異体あるいはゲノム編集により新規変異体を作成し、lzy1との遺伝学的な相互作用を調べ、lzy1 ler二重変異体と同様の表現型を示すか遺伝学的な解析を行う。ler変異の原因遺伝子の同定が難航する可能性も考慮して、LER遺伝子の同定に依存しない形で、LZY1による細胞分裂面決定機構を明らかにするため、LZY1の相互作用因子の探索やLZY1の細胞内における極性を撹乱することを試みる。具体的には2022年度に作成を行なったTurboIDを利用した近接標識法を利用したLZY1相互作用因子の単離を行い、得られた因子に関して変異体の表現型観察や細胞内での局在・動体を観察する。また、LZY1の細胞内での極性を撹乱するために細胞膜局在シグナルを付加することで、細胞膜上に一様に局在させ、細胞分裂の様子を観察する。

次年度使用額が生じた理由

高速シークエンサーを用いたゲノムの再解析により、lzy1変異を亢進するler変異の同定を進めていたが、染色体の構造変化を伴う変異であり、ショートリード型の高速シークエンサーでは十分な解析が行えないことが判明した。このため、新たにロングリード型の高速シークエンサーを用いた解析を行う必要が生じたため、当初の研究計画に遅れが生じた。このため、LZY1とLERの相互作用解析など生化学的な解析に遅れが生じ、次年度使用額が発生した。次年度使用額はLZY1とLERの相互作用解析などの生化学的な解析に必要となる試薬類などの購入するための費用として使用する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Gravity sensing and responses in the coordination of the shoot gravitropic setpoint angle2022

    • 著者名/発表者名
      Kawamoto Nozomi, Morita Miyo Terao
    • 雑誌名

      New Phytologist

      巻: 236 ページ: 1637~1654

    • DOI

      10.1111/nph.18474

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] TILLER ANGLE CONTROL1による側枝伸長角度制御の遺伝的制御機構2023

    • 著者名/発表者名
      川本望、西村岳志、森田(寺尾)美代
    • 学会等名
      第64回日本植物生理学会年会
  • [学会発表] 合成生物学アプローチによる樹木の枝の伸長角度制御-植物発生・生理学からのBaubotanikへの挑戦-2022

    • 著者名/発表者名
      川本望、中楚洋介、吉田祐樹、國枝正、出村拓、澤進一郎、森田(寺尾)美代
    • 学会等名
      2022年度日本建築学会大会
  • [学会発表] 側枝の伸長角度制御に関わるシロイヌナズナTILLER ANGLE CONTROL1の解析2022

    • 著者名/発表者名
      川本望、西村岳志、森田(寺尾)美代
    • 学会等名
      第86回日本植物学会大会

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公開日: 2023-12-25  

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