研究課題/領域番号 |
22K15190
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研究機関 | 北九州市立自然史・歴史博物館 |
研究代表者 |
中原 亨 北九州市立自然史・歴史博物館, 自然史課, 学芸員 (10823221)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 渡り鳥 / キャリーオーバー効果 / 社会関係 / つがい外交尾 / つがい |
研究実績の概要 |
ある時期の状態が以降に続く生活史イベントのパフォーマンスに影響するというcarry-over effects (COE) は、動物で普遍的に生じている。COEは主に気候や環境条件に起因するが、近年、鳥類の社会関係にも起因して生じることがわかってきた。鳥類の社会構造の成り立ちや生活史進化の背景を知るうえでこの効果の理解は極めて重要であるが、鳥類の中でも渡り鳥は繁殖・越冬のために生息地を大きく変えるため、社会関係の長期的な把握が困難であり、その全貌は明らかになっていない。 本研究では、鳥類の社会関係に起因したCOEが生じうる例として、渡り性猛禽類ノスリで越冬期に見られる雌雄のなわばり共有行動に焦点を当てる。ノスリは社会的一夫一妻で繁殖期にはつがいで子育てをする一方、越冬地へ渡ったあとは単独でなわばりを形成し侵入者に対して排他的である。しかし予備的な調査により、散発的に雌雄でなわばりを共有する場合があることが分かってきた。越冬地で見られるこの2個体の社会関係がどのようなものなのか、そしてそれが繁殖地まで持ち越される関係なのかどうかは不明である。これを明らかにするための糸口として、2022年度は、福岡県内で越冬し、雌雄でなわばりを共有するノスリを発見し両個体の捕獲に成功した。これらにはGPSロガーを装着し、以後の動きを追跡することができた。その結果、冬の間2個体は行動圏が大きく重複していた一方で、早春にはオスとみられる1個体は青森県へ、メスとみられる1個体は山形県へ別々に移動し春の渡りを終えた。これは、追跡した雌雄が繁殖つがいではないことを意味する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、福岡県で越冬する2個体のノスリがなわばりを共有していることを確認し捕獲を試みたところ、2個体とも捕獲しGPSロガーを装着することができた。また、これら2個体からはDNA抽出が可能なサンプルも入手することができた。GPSロガーは装着後数か月経っても順調にデータを送ってきている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、越冬地でなわばりを共有する雌雄の「つがいではない関係性」の可能性の一つとして、「浮気関係」があるかどうかについて調べる。まず、2022年度に福岡県で捕獲した個体(メス)の越夏地へ赴き、追跡個体につがい相手がいるかどうかを確認する。つがい相手がいた場合、その個体の捕獲を試み、DNAサンプルを採取する。もし繁殖を確認でき、巣へのアクセスが可能であれば、ヒナからもDNAサンプルを採取し、つがい相手のDNAと、冬になわばり共有をしていた相手のDNAとともに親子判定の材料とする。これにより、追跡個体がつがい相手と育てている子の中に、冬になわばり共有をしていた相手の子が含まれていないかを確認する。 また、2022年度と同じく、冬季には越冬地でなわばり共有を行う個体を探索し、見つけることができた場合は捕獲を試み、DNA抽出用サンプルを採取したのち、GPSロガーを用いて追跡する。
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次年度使用額が生じた理由 |
急激な円安により、当初入手を希望していた個数のGPSロガーを入手できなかった。2023年度はこの残金を活用し、当初予定よりも多めにGPSロガーを購入する予定である。
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