研究実績の概要 |
2023年度は、腸内マイクロバイオームのメタゲノムデータに対して、コンティグビニング解析という手法を用いることで、細菌のドラフトゲノム(MAG: Metagenome-Assembled Genomes)の網羅的な構築を行った。本研究課題オリジナルであるラオス北部民のメタゲノムデータに、既に公開されている発展途上国由来のパブリックメタゲノムデータを加えた約10コホート由来の腸内マイクロバイオームデータを対象とした解析を行い、発展途上国の人々の腸内マイクロバイオームに存在する細菌のMAGを構築した。さらに、先進国の人々の腸内細菌のMAGが多く含まれる大規模なMAGのデータベースと統合し、サイズの小さいゲノムや他の細菌の遺伝子が混ざってしまった品質の低いゲノムを取り除きクラスタリングすることで、10,000以上の高品質かつ重複のないMAGを収集することができた。 いくつかのコホートには、各サンプルに採取場所が都市であるか・郊外であるかというデータが付随していたため、この情報を用いた統計解析を行うことで、経済発展によって増えるあるいは失われる傾向のある腸内細菌由来のMAGを推定することができた。また、様々な疾患患者のメタゲノムデータを収集し、これらの経済発展との相関が想定される細菌ゲノムの疾患コホートにおける分布を評価したところ、複数の疾患で共通してその分布が特徴的なゲノムが存在することが示された。
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