研究実績の概要 |
昨年度は、興奮性神経細胞の樹状突起上に形成される興奮性神経軸索末端のシナプス(Aシナプス)と、アストロサイト微細突起に局在する細胞間接着分子をそれぞれ同定し、これらの分子がアストロサイトの機能分子の局在を制御することで、シナプス形成とシナプス機能を制御することを報告した(Development, 2023)。 今年度は、抑制性神経細胞の樹状突起上に形成される興奮性神経軸索末端のシナプス(Bシナプス)に形成される三者間シナプスの形成機構を解析した。その結果、昨年度のAシナプスで報告した機構と同様に、Bシナプスにおいても、アストロサイト上のNecl-2が軸索末端のNecl-3とトランスに結合して相互作用し、アストロサイトの機能分子の局在を制御することで三者間シナプスが形成されることを解明した(論文投稿中)。 また、その他のシナプス(興奮性神経細胞の樹状突起上に形成される抑制性神経軸索末端のシナプス(Cシナプス)、抑制性神経細胞の樹状突起上に形成される抑制性神経軸索末端のシナプス(Dシナプス))についても並行して解析を進め、これらの三者間シナプスの形成機構に関する論文を準備中である。特にDシナプスについては、抑制性神経細胞に発現しDシナプス特異的に局在する細胞間接着分子によるDシナプス機能の制御機構を明らかにしつつあり、この成果に関する論文も準備中である。 このように、本補助事業期間を通じて、A、Bシナプスについてはその成果を取りまとめ、C、Dシナプスについても核となる知見は取得済みであることから、4種類すべての三者間シナプスの形成機構を解明するという当初の目標はほぼ達成した。さらに、細胞間接着分子によるDシナプス機能の制御機構の解明につながる知見も得たことから、当初の想定を上回る成果が得られた。
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