非冬眠動物であるマウスにおいて、視床下部の小領域である前腹側脳室周囲核( AVPe ) に存在するQrfp 発現ニューロン(Qニューロン)を特異的に興奮性操作することで冬眠様状態を誘導し得ることが分かっているが、そのQニューロンがどのようなメカニズムでセットポイントを調節して低体温を引き起こすのかについては未だ明らかになっていない。そこで本研究ではウィルスベクターを用いた神経回路トレーシングによってQニューロンに制御される神経回路を組織学的に明らかにし、光遺伝学的手法や化学遺伝学的手法を用いてQニューロンの下流経路を操作し、Qニューロンの作動メカニズムを明らかにすることを目指した。 Qニューロンの主な投射先であるDMHにはグルタミン酸作動性ニューロンやGABA作動性ニューロンが存在することが明らかになっているので、逆行性トランスシナ プス標識法によりvGlut2-ires-CreおよびvGat-ires-Creマウスを用いて、DMHの各ニューロン群に入力するニューロン群を標識した。これまでに、Qニューロンには3つのサブタイプが存在し、約80%がグルタミン酸作動性(Qeニューロン)、5%強がGABA(Qiニューロン)、残りはvGlut2とvGatの両方を発現するハイブリッドタイプ(Qhニューロン)であることが明らかになっている。そこで、新たなQrfp-flpマウスを作出し、AAVベクターを用いてQニューロンのサブタイプにおけるDMHへの投射パターンを明らかにすることについて試みた。
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