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2022 年度 実施状況報告書

嗅覚系における感覚情報-文脈情報-行動をつなぐ神経メカニズム

研究課題

研究課題/領域番号 22K15232
研究機関立命館大学

研究代表者

塩谷 和基  立命館大学, 生命科学部, 助教 (90907015)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2024-03-31
キーワードventral Tenia Tecta / 嗅皮質 / 内側前頭前野 / オプトジェネティクス / 電気生理 / 古典的条件付け / 神経回路 / 嗅覚・聴覚
研究実績の概要

私はこれまでに嗅皮質の一部であるventral tenia tecta(vTT)という亜領域が高次領域であるmedial prefrontal cortex(mPFC)から解剖学的な直接入力を受けていること、またvTTの個々の神経細胞が、文脈に依存した様々な行動状態に対して応答することを明らかにした (Shiotani et al.,2020)。またこれまでに、mPFCを中心とした回路で文脈情報が作られていることもわかっている(Hyman et al., 2012)。それらのことから、末梢の嗅球(olfactory bulb)からの入力と高次領域のmPFCからの入力の両方を受けるvTTは、感覚情報と文脈情報を統合する重要な場であることが容易に想像できる。そこで本研究は、文脈に応じて感覚情報を正しい行動に結びつける神経メカニズムを明らかにするために、末梢からの感覚情報と高次領域からの文脈情報がvTTで統合され行動につながるための神経回路を解明することをめざす。具体的には、単一ニューロン活動記録法と光遺伝学的手法を組み合わせることで、mPFCからvTTへ行動状態の情報が伝達されることを明らかにし、さらにその際のvTTの応答特性を詳細に解明することを目的とする。これにより、文脈に沿った行動選択を実現する神経メカニズムを明らかにし、感覚情報から適切な行動を取るための神経回路モデルを構築する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

単一ニューロン活動記録法と、光遺伝学的手法を組み合わせることで、(Ⅰ) vTTの行動状態の情報がmPFCからもたらされるかどうかを確かめることを行った。さらに、(Ⅱ) vTTで生じる文脈依存の行動状態を表す情報が、他の感覚刺激にも共通した包括的な情報であるのかどうかを明らかにすることを行った。
(Ⅰ)まず、マウスが匂いから適切な行動を取るように、匂いと報酬や罰を連合させた嗅覚古典的条件付け課題の確立を行った。mPFCからvTTへの投射経路が、文脈に基づいた行動情報をvTTに供給しているという仮説を検証するために、マウスのmPFCに遺伝子組み換えアデノ随伴ウイルス(AAV)を投与し、mPFC神経細胞にArch3.0を発現させ、さらにvTTに光ファイバーと記録電極を挿入する手術を行った。こうすることで、mPFCからvTTへと投射するmPFC神経細胞の軸索を人工的に抑制(光抑制)することが可能となる。嗅覚古典的条件付け課題遂行中にmPFC神経細胞の軸索を光抑制する試行と光抑制しない試行をランダムに行い、その時のvTTの神経活動を記録している段階である。さらに、mPFCからvTTへの入力と行動出力との因果関係を解明するために、光抑制によって生じる課題中のマウスの行動変化について動画から深層学習を用いた解析を行うことによって定量化について現在解析を行っている。
(Ⅱ) vTTの文脈依存性の行動状態への応答が嗅覚以外の感覚にも共通して生じ、他感覚も含む包括的な応答であるのかを明らかにするために、嗅覚刺激だけでなく、他の感覚刺激である音刺激も用いて、刺激から適切な行動を取ることが求められる嗅覚・聴覚古典的条件付け課題をマウスに行わせた。具体的には、異なる匂いや音の高低それぞれと報酬の有無を学習させる課題中に、vTTの神経活動の記録を行っている段階である。

今後の研究の推進方策

単一ニューロン活動記録法と光遺伝学的手法を組み合わせることで、mPFCからvTTへ行動状態の情報が伝達されることを明らかにするために、前年度に確立した匂いと報酬や罰を連合させた嗅覚古典的条件付け課題を引き続き行い、(Ⅰ) vTTの行動状態の情報がmPFCからもたらされるかどうかについて明らかにする。具体的には、mPFCからvTTへと投射するmPFC神経細胞の軸索を光抑制を行う個体数を増やして、vTT神経活動について応答特性について詳細の解析を行い、光抑制によって生じる課題中のマウスの行動変化についても動画から深層学習を用いた解析を行うことによって定量化について解析を進めるようにする。さらに、(Ⅱ) vTTで生じる文脈依存の行動状態を表す情報が、他の感覚刺激にも共通した包括的な情報であるのかどうかを明らかにするために、前年度に確立した異なる匂いや音の高低それぞれと報酬の有無を学習させる嗅覚・聴覚古典的条件付け課題を引き続き行い、個体数を増やしてvTTで生じる文脈依存の行動状態を表す情報を持つのかついての神経活動の応答特性について詳細に明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

ロシアのウクライナ進行に伴った世界的な半導体不足や物価高などにより、物品調達の値段の大幅な上昇や納品日の遅延など当初の予定したものとは異なったために、使用額に差が生じた。今年度使用しきれなかった10万円程度の研究費は次年度に調節を行い、物品費の消耗品費用に充てる予定である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 3件)

  • [雑誌論文] Auditory Cortex Neurons Show Task-Related and Learning-Dependent Selectivity toward Sensory Input and Reward during the Learning Process of an Associative Memory Task2022

    • 著者名/発表者名
      Takamiya Shogo、Shiotani Kazuki、Ohnuki Tomoya、Osako Yuma、Tanisumi Yuta、Yuki Shoko、Manabe Hiroyuki、Hirokawa Junya、Sakurai Yoshio
    • 雑誌名

      eneuro

      巻: 9 ページ: 0046~22.2022

    • DOI

      10.1523/ENEURO.0046-22.2022

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 行動課題に依存した眼窩前頭前野における意思決定変数の符号化2023

    • 著者名/発表者名
      大貫 朋哉、大迫 優真、塩谷 和基、谷隅 勇太、高宮 渉吾、松井 凪、眞部 寛之、櫻井 芳雄、廣川 純也
    • 学会等名
      日本生理学会第100回記念大会
  • [学会発表] 匂い情報処理過程における前扁桃野の機能2023

    • 著者名/発表者名
      福本 慎吾、北村 菜々、江原 健悟、谷隅 勇太、廣川 純也、櫻井 芳雄、木津川 尚史、塩谷 和基、眞部 寛之
    • 学会等名
      日本生理学会第100回記念大会
  • [学会発表] 自由行動下のマウスにおける風味弁別行動課題2022

    • 著者名/発表者名
      塩谷 和基、谷隅 勇太、村田 航志、 大迫 優真、大貫 朋哉、高宮 渉吾、廣川 純也、櫻井 芳雄、眞部 寛之
    • 学会等名
      NEURO2022(第45回 日本神経科学大会・第65回 日本神経化学会大会・第32回 神経回路学会大会)
  • [学会発表] 感覚皮質ニューロンのバラエティ豊かな行動状態表象とその機能2022

    • 著者名/発表者名
      谷隅 勇太、塩谷 和基、大迫 優真、大貫 朋哉、高宮 渉吾、廣川 純也、櫻井 芳雄、眞部 寛之
    • 学会等名
      NEURO2022(第45回 日本神経科学大会・第65回 日本神経化学会大会・第32回 神経回路学会大会)
  • [学会発表] Prefrontal to olfactory cortex ventral tenia tecta inputs share odor-evoked behavioral-state signals to affect context-dependent learning2022

    • 著者名/発表者名
      Yuta Tanisumi, Kazuki Shiotani, Yuma Osako, Tomoya Ohnuki, Shogo Takamiya, Junya Hirokawa, Yoshio Sakurai, Hiroyuki Manabe
    • 学会等名
      FENS Forum 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] 扁桃体領域である前扁桃野ニューロンの匂い弁別行動課題における役割2022

    • 著者名/発表者名
      福本 慎吾、北村 菜々、江原 健悟、谷隅 勇太、廣川 純也、櫻井 芳雄、木津川 尚史、塩谷 和基、眞部 寛之
    • 学会等名
      第1回JASTS若手の会
  • [学会発表] 匂い弁別行動課題における前扁桃野ニューロンの機能解明2022

    • 著者名/発表者名
      福本 慎吾、北村 菜々、江原 健悟、谷隅 勇太、廣川 純也、櫻井 芳雄、木津川 尚史、塩谷 和基、眞部 寛之
    • 学会等名
      2022年度 日本味と匂学会第56回大会
  • [学会発表] 前部扁桃皮質核における匂い情報と行動の関連性の解明2022

    • 著者名/発表者名
      北村 菜々、福本 慎吾、江原 健悟、谷隅 勇太、廣川 純也、櫻井 芳雄、木津川 尚史、塩谷 和基、眞部 寛之
    • 学会等名
      2022年度 日本味と匂学会第56回大会
  • [学会発表] ラット超音波発声によるおいしさ反応測定の試み2022

    • 著者名/発表者名
      池戸 優希、村田 航志、領 家崇、塩谷 和基、眞部 寛之、黒田 一樹、吉村 仁志、深澤 有吾
    • 学会等名
      2022年度 日本味と匂学会第56回大会
  • [学会発表] Inherent information in pupil changes during perceptual information processing process2022

    • 著者名/発表者名
      Kengo Ehara, Shingo Fukumoto, Yuta Tanisumi, Yoshio Sakurai, Takashi Kitsukawa, Kazuki Shiotani, Hiroyuki Manabe
    • 学会等名
      Joint French-Japanese Scientific Seminar 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] Development of a task to recover visual acuity in mice with grating stimuli2022

    • 著者名/発表者名
      Nana Kitamura, Shingo Fukumoto, Kengo Ehara, Chieko Koike, Takashi Kitsukawa, Kazuki Shiotani
    • 学会等名
      Joint French-Japanese Scientific Seminar 2022
    • 国際学会

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公開日: 2023-12-25  

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