研究課題/領域番号 |
22K15237
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
内田 俊太郎 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (80919142)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 交感神経 / 熱産生 / 体温 / 低代謝 / 褐色脂肪組織 / 延髄 / 延髄縫線核 |
研究実績の概要 |
先行研究から、延髄縫線核のvGluT3陽性ニューロンは、発熱を誘導する交感神経の前運動ニューロンであることが示唆されている。これまで、組織化学や古典的薬理学による研究ではこれらのニューロンが発熱に責任のあることが示唆されてきたが、遺伝学的にこのニューロンにアクセスした研究は行われてこなかった。本研究の目的はこのニューロン群に着目し、現代の神経科学ツールを適用することで従来の知見をアップデートすることである。 本年度はこのニューロン特異的に組み換え酵素を発現するマウスの作製に成功し (vGluT3-Flpoマウス)、このマウスを用いて現代の神経科学に必須のツールを適用した。 まず、薬理遺伝学的手法によって、延髄縫線核のvGluT3陽性ニューロンに興奮性操作を行った。その結果著明な発熱効果を示すことを確認した。また、ファイバーフォトメトリーによる集団的活動イメージングによって、体温の上昇に相関して、このニューロン群のカルシウム動態も上昇することを確認した。 さらに軸索トレーシングによってこのニューロンは、結合腕傍核や三叉神経主感覚核および胸髄T1-T6領域の節前ニューロンに投射することを見出した。 このように、本年度は①これらのニューロンを直接操作すること、②活動動態を可視化すること、③出力機構を明らかにすることの3点に成功した。 今後、能動的低代謝状態におけるこのニューロンの活動動態や寄与を明らかにしたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
vGluT3-Flpoマウスの開発と特異性を確認したことが最大の進捗である。このマウスを用いてイメージング・薬理遺伝学・軸索トレーシングといった現代の神経科学に必須の実験系の適用に成功したため、順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
入出力機構の解明とイメージング実験の継続を行う。最終的には能動的低代謝状態における交感神経前運動ニューロンの機能と活動動態にまで踏み込み、論文投稿を行う。
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