研究課題/領域番号 |
22K15242
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
友重 秀介 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (50822524)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 標的タンパク質分解 / in vitro / 抗菌薬 |
研究実績の概要 |
薬剤耐性菌が世界中で脅威となっており、これを克服するための新機軸の抗菌薬が求められている。近年、創薬研究においてPROTACをはじめとするタンパク質分解薬が話題となっている。また、PROTACは耐性変異を獲得したタンパク質に対しても活性を示すという報告からタンパク質分解薬が薬剤耐性菌克服につながると考え、本研究では細菌タンパク質の分解を誘導する化合物の創製を目指している。 本年度は、細菌のプロテアーゼを利用する化合物の設計・合成を行った。まずは概念実証のため、標的タンパク質を単量体ストレプトアビジンmSAに設定し、細菌プロテアーゼの活性化剤とmSAリガンドからなる化合物を設計した。この化合物は多段階の有機合成反応により合成した。また、精製した細菌プロテアーゼを用いるin vitro活性評価系として、分解されることで蛍光色素を放出する基質を用いた評価系と、ウェスタンブロッティングによってmSA量を定量する評価系の構築も完了した。これらの評価系を用いて化合物を評価したところ、化合物は細菌のプロテアーゼを活性化できることを確認したものの、標的タンパク質の減少は誘導することができなかった。一方で、in silicoシミュレーションによるプロテアーゼとmSAの複合体形成の解析から、化合物デザインの妥当性を確認できた。 また、本研究の妥当性確認のため、細菌と同じプロテアーゼを発現している別生物種での実験も並行して行い、こちらでは分解活性が認められたため、本研究の妥当性も確認できた。現時点では、細菌で活性が認められない原因として細菌プロテアーゼ活性化剤の活性が不十分である可能性を考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りに目的とする化合物の合成を完了し、in vitroでの活性評価系の構築も完了したため。また、別生物種のプロテアーゼを用いた検討では、合成した化合物が標的タンパク質を減少させることも見出し、本研究の妥当性を示すことができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
in silicoシミュレーションの結果から、化合物デザインに問題が無いことが示されたため、現在の化合物の構造を少しずつ変更し、活性のチューニングを行っていく。概念実証が済み次第、標的タンパク質を細菌の内在性タンパク質に変更して実験を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度の実験により、設計・合成した化合物に活性が認められず、当初の分子設計を見直すために予定していた実験の代わりに計算科学解析を進めたため次年度使用額が生じた。計算科学解析の結果を基に、次年度使用額と併せて化合物の構造展開に使用する計画である。
|