研究課題
筋細胞の収縮を制御し、遺伝子変異に起因する異常が発生すると様々な致死性筋疾患の原因となるカルシウムチャネル、リアノジン受容体(RyR)のアイソフォーム選択的制御剤を複数開発した。今年度はこれまで選択的な阻害剤が報告されていなかったRyR2に関する研究を重点的に展開し、高活性・完全RyR選択性を有する化合物TMDJ-035を開発、報告した。その中で、阻害活性発現にはTMDJ-035の中心に位置するアミド構造の幾何異性、cis-amide構造が必須であることを見出し、またRyR2に変異を導入した心臓疾患モデルマウスの心筋から単離された細胞に対して化合物投与を行い、RyR2変異心筋細胞特有の異常なカルシウムシグナルの抑制を導くことを示した。同時に、新たな骨格を有するRyR2阻害剤も複数開発し、選択的な阻害剤のバリエーションを増やすことに成功した。特に、パラバン酸骨格を有する化合物の構造展開によって、同骨格が新たなケミカルファーマコフォアとなりうることを示した。また、RyR1に関しては、これまでに報告していた化合物をもとに、ジアジリン基を導入した光親和性ラベリングプローブを設計・合成し、高活性阻害剤のRyR1結合位置の同定を試みた。活性化剤としても、RyR1、RyR2およびRyR非選択的活性化を既存試薬caffeineより低濃度で導く化合物の合成を行い、構造活性相関による活性化能の向上を図った。その中で、活性化剤は阻害剤と異なり、微妙な構造の変化によって選択性を失い、RyR1/2両者を活性化するようになってしまうことを明らかにした。前年度の結果も併せ、既存薬の問題点をクリアしつつ、RyR1,2の制御を行うケミカルツールボックスを創出し、RyRの動的開閉メカニズム追求に向けた取り組みを進めた。
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Chemical and Pharmaceutical Bulletin
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