研究課題/領域番号 |
22K15248
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
有地 法人 京都大学, 薬学研究科, 助教 (60904935)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 可視光レドックス触媒 / ラジカル / アジド / 結合切断 / 骨格変換 |
研究実績の概要 |
近年の光レドックス触媒の発展により、アルコールの強固な炭素-炭素結合を可視光照射という穏和な条件で切断することが可能になった。その有用性を拡張するべく、本研究では環状アルコールの開環を伴うアジド化反応の開発を目的としている。生じる鎖状生成物が有するアジド基とカルボニル基の反応性を利用して環化することで、環状アミンへの骨格変換と医薬化学における誘導体合成への貢献が期待できる。
当該年度においては、3級シクロペンタノールをモデル基質として用いて、触媒やアジド化剤、溶媒などの反応条件の検討を行った。その結果、目的物である鎖状アジドを低収率ながらも単離することに成功した。副生物を精査したところ、アジド基ではなく、クロロ基や水素原子が取り込まれた鎖状化合物が生成していることがわかった。触媒のクロリド配位子が塩素源となって、炭素-炭素結合の切断によって生じる炭素ラジカル中間体がクロロ化されたものと考えられる。また重溶媒を用いた対照実験によって、溶媒として用いたアセトニトリルからの炭素ラジカル中間体への分子間水素原子移動(HAT)によって、水素化体が生じていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデル基質において、低収率ながらも目的物を単離することに成功したため。また強固な炭素-炭素結合を切断して、不安定な1級炭素ラジカルを発生させるという過程は、問題なく進行していることを確認できた。副生物を精査することで、目的物の収率が低い原因を洗い出すこともできた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにアジド化剤としてスルホニルアジドを網羅的に検討したが、反応性が低く、炭素ラジカル中間体から目的物である鎖状アジドへの変換を効率的に行うことができていない。今後は、炭素ラジカルのアジド化剤として働くことが知られている遷移金属アジド錯体が系中で生成するような反応系を検討する。
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