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2023 年度 実施状況報告書

新規三成分ラジカルカップリングの開発と創薬リード天然物の合成

研究課題

研究課題/領域番号 22K15254
研究機関長崎大学

研究代表者

小嶺 敬太  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 助教 (70838268)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード有機合成化学 / 天然物合成 / アルカロイド / ラジカル反応 / 青色LED
研究実績の概要

近年の創薬研究において複雑に縮環した構造を持つ天然物が注目されており、酵素との親和性の高さから既存の医薬品よりも活性の増強や選択性の向上が期待されている。生薬の一種であるヒカゲノカズラ科の植物から単離されたリコポジウムアルカロイドは、魅力的なリード化合物であるものの、その構造の複雑さから合成が困難であり、効率的合成法が必要である。本研究はリコポジウムアルカロイドの効率的かつ網羅的な合成法を確立することを目的とする。また、本合成を達成する上で鍵となる、ラジカルの電子的な性質を考慮したアシルラジカルを経るラジカルカップリングの開発を行い、新規分子構築法の確立を目指す。
まず、カルバモイルラジカルを用いた三成分ラジカルカップリングについて、昨年度得られた知見をもとに、反応条件の最適化を行った。最終的に、1当量のセレノカルバメートと、4当量のエノンとアリルスズのクロロベンゼン溶液に、光駆動型触媒であるホスフィンオキシドを加えて氷冷下で青色LEDを照射すると、反応は円滑に進行し、三成分カップリング体が立体選択的に得られることがわかった。その後、本反応の基質適用範囲の拡大や反応メカニズムの解析を行い、これらの結果を論文にして投稿した。
次に、本天然物群の不斉合成を行うべく、昨年度合成した共通中間体の不斉合成を試みた。まず、キラルなエノン体を用いた三成分ラジカルカップリングの検討を行った。反応条件を再度最適化する必要があったが、望む生成物を選択的に得ることができた。その後、酸性条件でのシリルエーテルの脱離等を経て、既知中間体を高い光学純度で合成することができた。この既知中間体から共通中間体までの合成経路は既に確立していることから、高い光学純度を持った共通中間体の合成が可能となった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画に基づき研究を実施し、以下の成果が得られた。
① セレノカルバメートとエノンとアリルスズの三成分ラジカルカップリングを検討した。その結果、青色LEDと光駆動型触媒であるホスフィンオキシドを用いた、立体選択的な新規の分子構築法を開発することができた。カルバモイルラジカルを用いた三成分ラジカルカップリングの確立は、本合成研究において大変重要な位置付けであり、本年度の目標であった。昨年度見出した反応条件をもとに、反応条件の最適化や基質適用範囲の拡大、反応メカニズムの解析を行い、これらの結果を論文にすることができた。
② 本年度のもう1つの目標である本天然物群の不斉合成への展開を目的とした、共通中間体の不斉合成法の検討も行った。予期せぬ異性化等に遭遇したが、適宜合成戦略を見直すことで解決し、既知中間体を高い光学純度で合成することができた。この既知中間体から共通中間体までの合成経路は既に確立していることから、目的としていた共通中間体の不斉合成が可能となった。
上記の理由から、本研究は概ね順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

今年度で共通中間体の不斉合成法を見出すことができた。来年度は、本年度の成果に基づき、生物活性天然物の不斉合成へ展開する。
まず本合成法を用いて、実際に高い光学純度を持った共通中間体の量的供給を行う。この際、キラルエノンの合成に多工程を有していることから、短工程化を目指して合成経路の見直しを行う。次に、共通中間体から標的とする生物活性天然物の合成を試みる。具体的には、アミド体に対し、適切な求核剤を付加して炭素鎖を伸長する。その後、酸性条件下でヒドリド還元を行えば、高立体選択的に望む立体化学を持つ化合物が得られると考えた。その後、SmI2を用いて立体選択的に環化し、標的天然物の不斉合成を完了する。本研究計画は十分精査したものであるが、万が一、当初の計画通りに進まない場合、適宜柔軟に合成戦略を修正する。
そして、これまで得られた知見をもとに、実施計画に記載した類縁体の網羅的合成を試みる。具体的には、共通中間体から対応するセグメントを用いて同様の手法により炭素鎖を伸長し、SmI2を用いて立体選択的に環化し、本天然物群の合成を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

本研究は順調に進行しているものの、僅かながら使用額に差額が生じた。主な原因は海外製品の試薬の購入を行ったが、納品が遅れてしまい、年度を跨いだためである。また、次年度により高額な試薬の購入が予想されたため、差額は次年度の予算にまわした。次年度分として請求した助成金と合わせ、研究計画に則って使用する計画である。

  • 研究成果

    (20件)

すべて 2023 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Visible-Light-Induced Three-Component Radical Coupling of Selenocarbamates, Enones, and Allylstannanes with Diphenyl (2,4,6-trimethylbenzoyl)phosphine Oxide2023

    • 著者名/発表者名
      Komine Keita、Yamazaki Yuta、Iwanaga Taiga、Sakaguchi Hikaru、Fukuda Hayato、Ishihara Jun
    • 雑誌名

      Synlett

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1055/a-2214-5512

    • 査読あり
  • [学会発表] Synthetic Studies on Lyconesidine A Based on Three-Component Radical Coupling2023

    • 著者名/発表者名
      Keita Komine, Yuta Yamazaki, Hayato Fukuda, Jun Ishihara
    • 学会等名
      The 7th Gratama Workshop
    • 国際学会
  • [学会発表] Synthetic Studies on Pyrroindomycin A2023

    • 著者名/発表者名
      Tomohiro Tsutsumi, Keita Komine, Hayato Fukuda, Jun Ishihara
    • 学会等名
      The 7th Gratama Workshop
    • 国際学会
  • [学会発表] Total Synthesis of Thuggacin cmc-A and its Structure Determination2023

    • 著者名/発表者名
      Tomohiro Tsutsumi, Moe Matsumoto, Hitomi Iwasaki, Kei Tomisawa, Keita Komine, Hayato Fukuda, Jacques Eustache, Susumi Hatakeyama, Jun Ishihara
    • 学会等名
      28th French-Japanese Symposium on Medicinal and Fine Chemistry
    • 国際学会
  • [学会発表] Synthetic Studies on Lyconesidine A Based on Three-Component Radical Coupling2023

    • 著者名/発表者名
      Keita Komine, Yuta Yamazaki, Hayato Fukuda, Jun Ishihara
    • 学会等名
      The 15th International Kyoto Conference on New Aspects of Organic Chemistry
    • 国際学会
  • [学会発表] Fawcettimine 型アルカロイド、リコネシジンAの合成研究2023

    • 著者名/発表者名
      山崎裕大、小嶺 敬太、福田 隼、石原 淳
    • 学会等名
      第33回万有福岡シンポジウム
  • [学会発表] ピロインドマイシンAの合成研究2023

    • 著者名/発表者名
      堤 智寛、小嶺 敬太、福田 隼、石原 淳
    • 学会等名
      第65回天然有機化合物討論会
  • [学会発表] フォーセチミン型アルカロイド、リコネシジンAの合成研究2023

    • 著者名/発表者名
      山崎裕大、小嶺 敬太、福田 隼、石原 淳
    • 学会等名
      第52回 複素環化学討論会
  • [学会発表] 環状デプシペプチド、リポディスカミド B の合成研究2023

    • 著者名/発表者名
      森 千知、小嶺 敬太、福田 隼、石原 淳
    • 学会等名
      第49回 反応と合成の進歩シンポジウム
  • [学会発表] 環状デプシペプチド、リポディスカミドB の合成研究2023

    • 著者名/発表者名
      森 千知、小嶺 敬太、福田 隼、石原 淳
    • 学会等名
      第40回 日本薬学会九州山口支部大会
  • [学会発表] 生物活性天然物ソランデラクトンG の合成研究2023

    • 著者名/発表者名
      三本 健人、川﨑 則彦、菊岡 勇、小嶺 敬太、福田 隼、石原 淳
    • 学会等名
      第40回 日本薬学会九州山口支部大会
  • [学会発表] アリストマキンの合成研究2023

    • 著者名/発表者名
      小出水 真穂、小嶺 敬太、福田 隼、石原 淳
    • 学会等名
      第40回 日本薬学会九州山口支部大会
  • [学会発表] 三成分ラジカルカップリングを基軸とするリコネシジンAの合成研究2023

    • 著者名/発表者名
      山崎 裕大、小嶺 敬太、福田 隼、石原 淳
    • 学会等名
      第40回 日本薬学会九州山口支部大会
  • [学会発表] タンデムラジカル環化反応を基軸としたグラジオビアノールの合成研究2023

    • 著者名/発表者名
      辻本 海輝、山本 純、小嶺 敬太、福田 隼、石原 淳
    • 学会等名
      第40回 日本薬学会九州山口支部大会
  • [学会発表] レゾルビンE2 安定等価体を用いた化学プローブの創製研究2023

    • 著者名/発表者名
      錦織 ひな、松原 光太郎、渡邉 瑞貴、周東 智、小嶺 敬太、福田 隼、石原 淳
    • 学会等名
      第40回 日本薬学会九州山口支部大会
  • [学会発表] アンフィジノリドL C1-C19 フラグメントの合成研究2023

    • 著者名/発表者名
      片山 祐菜、田中 芳、倉田 浩二、古賀 萌子、名越 航、小泉 潤、深谷 圭介、占部 大介、小嶺 敬太、福田 隼、石原 淳
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
  • [学会発表] ペニシビラエン類天然物の合成研究2023

    • 著者名/発表者名
      岩永 大雅、岸本 聡司、小嶺 敬太、福田 隼、石原 淳
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
  • [学会発表] クリスタキセニシンAの合成研究2023

    • 著者名/発表者名
      坂口 輝、二宮 里樹、小嶺 敬太、福田 隼、石原 淳
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
  • [学会発表] 大環状天然物ビスゲルソラノリドの合成研究2023

    • 著者名/発表者名
      川元 七海、川﨑 則彦、小嶺 敬太、福田 隼、石原 淳
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
  • [備考] 長崎大学 薬学部 薬品製造化学研究室

    • URL

      http://www.ph.nagasaki-u.ac.jp/lab/manufac/index-j.html

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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