研究課題/領域番号 |
22K15256
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
今吉 亜由美 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 助教 (20786462)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 蛍光色素 / 超分子化学 / 精密有機合成 |
研究実績の概要 |
我々は水素結合を形成可能なアミノ酸を既存の色素あるいは開発した蛍光色素に導入し、蛍光色素の相互作用に由来する新規光物性を開拓することを目的とし研究を行っている。 今回、側鎖にアミノ酸を導入した新たな蛍光色素の合成を行った。本蛍光色素は溶媒の種類や時間経過により色の変化が見られ、何らかの蛍光色素の相互作用が示唆された。これらの挙動の詳細を精査すべく、現在数種類のアミノ酸を導入した蛍光色素の合成を行っている。 また薬剤を取り込んでミセルを形成することが分かっているペプチドに蛍光色素を結合させ、ペプチドが会合体を形成した時にのみ、蛍光を発するペプチドの合成を行った。従来、一般的な蛍光色素であるフルオレセインを導入したペプチドでは、ペプチドが薬剤との会合体を形成しなくても、蛍光色素を付与したペプチド単体で発光するため、薬剤の挙動を追いにくいという問題があった。またペプチドが会合体を形成すると、濃度消光を起こしてしまうという課題があった。今回の結果は、そのような課題を克服し、DDSを可視化するための足がかりとなる結果であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的とするアミノ酸を側鎖に付与した蛍光色素を合成した。また薬剤と会合体を形成することで発光するペプチドを合成した。これらの研究の過程で、円偏光発光の学理の追求のため、量子化学計算を用いた化合物の蛍光特性の考察を行なった。励起状態で一部の化合物が興味深いねじれの構造を生み出すことを見出し、構造の類似した化合物が一見同じような蛍光特性を有しているように見えても、その発光特性は、化合物の微細な構造の相違に由来する励起状態での異なるコンホメーションに起因している可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
側鎖にアミノ酸を付与した蛍光色素の量上げと溶解性の改善を行い、色素の超分子化学的な相互作用様式の解明をUV, CD, 蛍光, CPL測定等によって行う。 また薬剤のDDSを可視化することを目指した蛍光色素を付与したペプチド会合体の合成を行い、共同研究先での細胞実験等にも取り組んでいく。長波長領域で蛍光を発するペプチドが、生体組織での薬剤の挙動の観察に有効であるため、蛍光色素の分子構造を改良し、近赤外に近い長波長領域で発光するペプチド会合体の合成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は少量検討による合成研究が多かったため、試薬の購入等に関する「物品費」の項目を抑えることができた。次年度は、化合物の大量合成に用いる試薬や、光物性の測定に伴う器具の購入に経費を充てさせていただく。
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