研究課題/領域番号 |
22K15261
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
岡田 康太郎 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 特命准教授 (70842962)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | メソポーラスシリカ / NMR / 緩和時間 / 結晶性 |
研究実績の概要 |
薬物-メソポーラスシリカ複合体は、メソサイズの細孔(2-50 nm)に低分子の薬物を物理吸着させた固形製剤であり、薬物の溶解性を著しく向上させるため、次世代の製剤として期待されている。しかし、吸着された薬物の放出メカニズムを、その場(in situ)で解析した例はなく、その全容は解明されていない。本研究では、時間領域-核磁気共鳴(TD-NMR)法の応用で、薬物-メソポーラスシリカ複合体のNMR緩和を測定する。そして、測定したNMR緩和を活用して、メソポーラスシリカに吸着された薬物が、放出プロセス中にどのように変化するかについて、in situで解析することを目指している。 本年度では、薬物-メソポーラスシリカ複合体の作成およびキャラクタリゼーションを行った。モデル薬物としてイブプロフェン(IBP)を選択し、メソポーラスシリカとしてSBA-15(SBA)およびSylysia 320(SYL)を用いた。含浸法にてIBPをシリカに吸着させたIBP吸着シリカをモデル製剤とした。作成した試料のT1緩和を低磁場NMR装置(minispec mq20, 20 MHz)にて測定し、T1緩和時間の可視化を目的として対数プロットに変換した。その結果、IBP吸着SBAのT1緩和は単相性の減衰を示したのに対し、IBP吸着SYLは二相性の減衰を示した。すなわち、SBAに吸着したIBPは一種類のドメインを有し、SYLに吸着したIBPは異なるT1緩和時間をもつ二種類以上のドメインを有する。結晶IBPのT1緩和との比較を行ったところ、SBAに吸着したIBPは非晶質であり、SYLに吸着したIBPは非晶質および結晶の混合物であることが分かった。この成果については取りまとめ、Chem. Pharm. Bull. 誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、薬物-メソポーラスシリカ複合体の処方検討を行う予定であった。処方検討を行った結果、当初の計画通り、IBP溶出プロファイルの異なる複合体を作る分けることができた。具体的には、イブプロフェン(IBP)をSBA-15(SBA)およびSylysia 320(SYL)に物理吸着させた複合体をそれぞれ作成し、溶出プロファイルを確認した。その結果、SBAに吸着させた複合体は過飽和現象を示した一方で、SYLに吸着させた複合体は示さなかった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、薬物-メソポーラスシリカ複合体を固体状態で評価する方法の検討を行う。本年度では、イブプロフェン(IBP)をメソポーラスシリカに物理吸着させた複合体を作成し、計画に先んじて、含まれるIBPの結晶性を低磁場NMR装置(minispec mq20, 20 MHz)にて評価できることを示した。ただし、低磁場NMR装置では、感度および分解能が低いため、最終年度に計画している、薬物-メソポーラスシリカ複合体を水に懸濁させた状態での評価がうまくいかないと予想される。そのため今後は、より感度および分解能の高い、高磁場NMR装置(JNM-ECX500, 500 MHz)を用いた検討も並行して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用する薬物を購入する計画に変更が生じたため、次年度使用額が生じた。次年度に薬物の購入に使用する計画である。
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