研究実績の概要 |
本研究では、定量用標準品が入手困難な化合物をターゲットとして、簡便かつ汎用性のあるトレーサビリティな定量法、シングルリファレンス(Single reference, SR )-HPLC法を開発してきた。2022年度では、分析対象化合物に最適なSRを入手するため、リファレンスデザイン(Design of Reference, DoR)を中心に研究を遂行した。DoRでは、分析対象化合物について吸収極大に関与する化学構造に着目し、 その吸収帯に影響を及ぼさない、かつクロマトグラフィーの保持時間を調節可能な官能基(アルキル基)を導入することを検討した。具体的に、カンナビジオール(Cannabidiol, CBD)を中心としたカンナビノイドを対象とした。これらはマリファナの主成分であるテトラヒドロカンナビノール(Tetrahydorocannabinol, THC)と異なり、精神作用を持たない鎮静効果を持つことより、近年、健康食品やサプリメント等で注目されている。ただし、健康食品中のCBD含有量について、国内における規制がまだ確立されていないため、CBD製品の品質が懸念されている。そこで、本研究では、CBDの化学構造式の2か所のヒドロキシ基に注目し、これらを有機合成によりメトキシ化することを試みた。得られた生成物を単離精製し、NMRにより構造決定し、HPLCのクロマトグラム上(検出波長254 nm)で生成物の純度を確認した。その結果、生成物は高純度なメトキシ化したCBD(純度95%以上)であることを同定した。入手した生成物をCBDのSRとして採用したかったが、当該の化合物は単離精製が難しく、収率がかなり低かったという問題点があった。そのため、CBDの部分的な構造に着眼し、類似した化合物かつ高収率で得られるSRを模索していく必要がある。
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