研究課題/領域番号 |
22K15270
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
蘇武 佑里子 北海道大学, 薬学研究院, 特任助教 (80825068)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 軸索輸送 / APP / アミロイド前駆体タンパク質 / 細胞内輸送 / キネシン1 |
研究実績の概要 |
アミロイド前駆体タンパク質(APP)はアルツハイマー病の原因因子アミロイドベータの前駆体であり、APP細胞内輸送の破綻はアミロイドベータの産生に寄与すると考えられている。APPが長い神経軸索を輸送される分子メカニズムは複数のモデルが存在しており、その全貌はいまだ明らかになっていない。 本研究はAPPの軸索輸送について、これまでのモデルとは異なる輸送機構の解析を目的としたものである。本年度では、CAD細胞およびマウス大脳皮質初代培養神経細胞を用いたAPP-EGFPのライブイメージングによる解析を行った。まず、新規輸送機構に関する候補分子をノックダウンすることで、候補分子の関与を明らかにした。また、この新規分子と既知のAPP輸送関連分子を同時にノックダウンすることで、新規分子が既知の輸送機構とは独立した機構であることが示唆された。片方の輸送機構を阻害するだけではAPPの軸索輸送は止まらず、両方の輸送機構を阻害することでAPPの輸送が大きく減少することから、それぞれの機構が相補的である可能性が考えられる。それぞれの機構がどの程度実際のAPP輸送に寄与しているか解析を続けたい。 同定した分子とAPPは免疫沈降による相互作用が確認されたが、直接結合するものではないと考えられた。APPと同定した分子のそれぞれで、各種の欠損変異体を作成し、相互作用に必要なドメインの探索を行った。APPと同定した分子の必要領域を絞り込むことができたが、間接的な相互作用を媒介する分子については、今後探索する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)当初の予定どおり、初代培養神経細胞を用いたAPP-EGFPのライブイメージングの安定した実験系を確立でき、候補分子のノックダウンにより新規輸送機構の分子メカニズムの推定を行うことができた。また、既知の輸送を担う分子であるJIP1欠損マウスから調製した大脳皮質初代培養神経細胞を用いてAPP輸送小胞の速度、方向を解析することで新規の輸送メカニズムがJIP1を用いた既知の輸送機構とは異なるものであることが示唆された。基本的な目的の一つである新規分子機構の提案を達成できたと考える。 2)詳細な分子機構の解析として、APPと候補分子の直接結合を予想していたが、解析を進めるにしたがって、間接的な相互作用の可能性が高いことを示した。各種の部分欠失体、部分変異体を作製し、Neuro-2A細胞を用いて相互作用解析を行った結果、APPおよび候補分子のそれぞれで相互作用に必要な領域を同定できた。間接的な相互作用を媒介する分子についての同定には至っておらず、次年度以降の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
同定したAPPと候補分子の相互作用を担う領域から、間接的結合を担う可能性のある分子の探索を行う。特に、目的分子の同定した領域は、他のIsoformでは欠損している独特の領域であったため、この領域への結合分子の探索を中心に行う。並行して、同定した領域を使用した網羅的な結合分子探索も進める予定である。また、既存の輸送機構と新規輸送機構は神経細胞中で同時に存在している可能性があり、これらの機構を調節するメカニズムの存在が予想される。新規分子の相互作用領域にはリン酸化による機能制御を受ける可能性が報告されているため、解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度では結合分子の同定に使用する予定であった質量分析を行わなかった。次年度以降、大規模な培養やマウス管理費、必要な試薬、物品、分析委託等に使用する。
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