現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画に沿って研究を実施した結果、予想以上に早く研究が進展し、原著論文として本成果を発表することができた(Miyake et al., Cell Reports, 2023)。具体的には、体内時計コア振動子であるPer2のmRNAにuORFを見つけ、これがPer2 mRNAの翻訳量を外部環境温度に合わせて制御する翻訳制御エレメントとしての機能をもつことを見出した。Per2温度応答は、たった1℃の温度上昇でも観察され、このような微小温度変化に対しては、mRNA転写量の変化は見られず、タンパク質量だけが変化することがわかった。Per2のuORFはuORFの中でも特殊な、開始コドンと終止コドンの2コドンしか有さない最小単位uORF(minimal uORF, m-uORF)であり、このminimalな構造が、Per2の翻訳温度応答に重要であることを明らかにした。さらに、化合物ライブラリスクリーニングにより、本制御機構の上流にはPI3Kがあること、Per2 uORFが無い遺伝子改変マウス(本研究課題で作出)では、皮膚創傷治癒速度の概日リズムが消失することを発見した。これらの結果より、Per2 uORFを介した生理的微小温度変化による生物時計調律機構は皮膚をはじめとした臓器・動物個体のホメオスタシス維持に重要であることが示された。
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