研究課題/領域番号 |
22K15276
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
民谷 繁幸 和歌山県立医科大学, 薬学部, 助教 (90908203)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マイコプラズマ ニューモニエ / 肺炎 / CARDS toxin / アレルギー / サイトカイン |
研究実績の概要 |
本申請研究では、肺炎の主たる原因菌の1つであるMycoplasma pneumoniae(マイコプラズマ)感染後における気管支喘息の発症および増悪機序の解明を図り、新規予防法確立のための基盤情報をも提案することを目的としている。これまでに①気管支喘息の発症に関与するIL-1alphaがマイコプラズマ感染時における炎症惹起に極めて重要であること、②マイコプラズマ由来外毒素CARDS toxinが炎症を惹起する分泌型のみならず、マイコプラズマ表面にも存在し、上皮細胞への接着に寄与するなど、マイコプラズマ感染時において重要な役割を果たす可能性を先駆けて見出している。本研究では、これまでの申請者らの知見を基盤として、マイコプラズマ感染後における気管支喘息の発症および増悪にIL-1alphaが寄与するのかを評価すると共に、マイコプラズマ感染の重要因子であるCARDS toxinの寄与についても精査する。今年度は、まずアレルギーモデルの作製を図った。麻酔下のマウスにダニ抗原(HDM)5 μgを10日間連続して経鼻投与したところ、コントコール群と比較して肺胞洗浄液中における好酸球(CD45+ CD11b+ CD11c- Siglec-F+)の数が有意に増加することを確認した。また、アレルギーの発症・増悪に寄与すると考えられているIL-1alphaの産生メカニズムに関しても検討を行った。その結果、マイコプラズマの有するTLR2リガンドがマクロファージ細胞内IL-1alpha貯蔵量を増加させること、さらにそれらの増加にはTLR2シグナルにより生成されたROSが重要であることが明らかとなった。本研究は、マイコプラズマ感染後における気管支喘息の発症および増悪機序の解明を図り、新規予防法確立のための一助となると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度より、現職である和歌山県立医科大学薬学部の助教として赴任したが、本学部は 2021年に新設されたため、未だ感染施設の稼働までに至っておらず、今年度はマイコプラズマを用いた感染実験は行えなかった。次年度は感染実験が行えるよう、前所属である大阪大学微生物研究所の招聘教員となり、研究が滞りなく遂行できるよう、手続きを進めている。
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今後の研究の推進方策 |
過去の報告より、肺胞マクロファージの細胞死に伴うIL-1alphaの細胞外への分泌がアレルギー疾患の発症に深く関連することが示唆されている。また、CARDS toxinが、マクロファージに作用することで、プログラムされたネクローシス性細胞死の一種であるパイロプトーシスを誘導することが報告されている。これらの報告を鑑みると、TLR2依存的に肺胞マクロファージに貯蔵されたIL-1alphaがCARDS toxinによる肺胞マクロファージの細胞死の誘導により細胞外に分泌され、気管支喘息の発症および増悪に寄与することが推測される。以上より、CARDS toxinはまさに、マイコプラズマ感染後における気管支喘息の発症および増悪に寄与する分子であり、感染時におけるその抗原性の高さから新規ワクチン抗原としても有望と期待される。そこで次年度は、まずマイコプラズマ感染後の気管支喘息発症モデルマウスを作製した後、マイコプラズマ感染後における気管支喘息の発症および増悪にIL-1alphaが寄与するのかを精査する。また、マイコプラズマの外毒素の一つであるCARDS toxinをワクチン抗原とすることで、マイコプラズマ感染後における気管支喘息の発症および増悪の抑制が可能かどうかを評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍であることに加えて、自身の所属が大阪大学微生物病研究所から和歌山県立医科大学に移ったことにより、次年度使用額が生じるに至った。これら予算は次年度の研究遂行に使用する予定である。
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