本研究計画では、肺炎の主たる原因菌の1つであるMycoplasma pneumoniae(マイコプラズマ)感染後における気管支喘息の発症および増悪機序を明らかにすると共に、種々の解析を通じて新規予防法確立のための基盤情報を提案することを目的としている。初年度は、まずダニ抗原(HDM)を用い、肺内で好酸球浸潤が認められるアレルギーモデルを作製した。そこで、本年度はこれらアレルギーモデルを用いて、マイコプラズマ感染後において気管支喘息の発症および増悪が観察されるかを評価した。しかし予想に反して、マイコプラズマをあらかじめ感染させておくことで、HDM投与による好酸球浸潤が顕著に抑制される、すなわち、アレルギー症状の悪化ではなく、抑制が観察された。また、抗原特異的なT細胞応答を評価したところ、コントロール群と比較し、マイコプラズマ感染群において、Th1型のサイトカインであるIFNγ量には変化がなかったものの、Th2型のサイトカインであるIL-13量の減少が認められた。これらの結果は、マイコプラズマ感染が相対的にTh1優位な免疫応答を誘導することで、HDMによるアレルギー反応が抑制される可能性を示唆している。今後、これらメカニズムの詳細な解明を図ると共に、ニワトリ卵白アルブミンを用いたアレルギーモデルの使用、アレルギー発症後のマイコプラズマ感染によるアレルギー評価を行うことで、マイコプラズマ感染によるアレルギーの発症・増悪モデルの作成にも引き続き取り組みたいと考えている。
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