研究課題/領域番号 |
22K15281
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研究機関 | 山陽小野田市立山口東京理科大学 |
研究代表者 |
告 恭史郎 山陽小野田市立山口東京理科大学, 薬学部, 助教 (40825121)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ゼブラフィッシュ / 脂質メディエーター / アラキドン酸 / プロスタグランジン / ロイコトリエン / GPCR / 再生 / 発生 |
研究実績の概要 |
アラキドン酸は、生体膜リン脂質よりホスホリパーゼA2によって切り出されることで産生される多価不飽和脂肪酸であり、シクロオキシゲナーゼ(COX)、または5-リポキシゲナーゼ(5-LOX)によって、それぞれプロスタグランジン(PG)、ロイコトリエン(LT)に代謝され、特異的なGタンパク質共役型受容体を介して、全身の様々な臓器で多彩な生理・病態作用を発揮する。古くから研究されてきたアラキドン酸由来生理活性脂質であるが、近年、発生・再生における新規機能が報告され注目を集めている。一方、現在のところ、PG、LTの発生・再生作用がどの受容体サブタイプを介して、どのような分子機構で発揮されるのか、その全容解明には至っていない。 本研究では、「アラキドン酸由来生理活性脂質の発生・再生作用の全容解明」、及び「再生医療へのアラキドン酸由来生理活性脂質の応用のための分子基盤の構築」を目的として、発生・再生研究において世界中で汎用されているゼブラフィッシュをモデル生物として、脂質受容体のシグナル伝達にフォーカスして解析を進めている。 ゲノム編集によって、これまでに申請者らが同定してきたPG受容体の網羅的な欠損系統を作成し、胚発生過程における各臓器の発現を調べた結果、複数の受容体欠損系統において、臓器の形成異常が観察された。この中でもX受容体を介した腎発生機構の研究、及びY受容体を介した性腺発生機構の研究が最も進んでいる。今年度はそれに加え、ある脂質受容体がヒレ再生に関与する可能性を薬理学的に推定し、当該受容体の生化学的解析、発現プロファイルを行った。現在、ヒレ再生時の発現細胞の同定、アゴニストによる再生促進実験、受容体欠損系統の作成に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、これまでのPG受容体欠損系統の解析に加え、ゼブラフィッシュのヒレ再生に関与する新しい脂質メディエーター受容体を見出し、生化学的解析、発現プロファイル、発生・再生における薬理作用の解析を進めることができた。現在、ヒレ再生時の発現細胞の同定、アゴニストによる再生促進実験、受容体欠損系統の作成にも取り組んでおり、当該受容体を介したヒレ再生の分子機構を明らかにする基盤が整いつつあるため、進捗状況は「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
初期発生における表現型を見出しているPG受容体に関しては、リガンド産生細胞、産生機構、受容体発現細胞、シグナル伝達経路の解析を進め、PG受容体を中心に、その上流経路と下流経路を明らかにする。また、ヒレ再生に関わる脂質受容体に関しては、ヒレ再生時の発現細胞の同定、アゴニストによる再生促進実験、受容体欠損系統の作成に取り組み、最終的には、哺乳類モデルでの保存性についても解析したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
In vitro実験のデータがまとまりつつあり、2023年度中に2報の論文投稿を予定している。一方、最近の論文掲載費の高騰、円安による輸入試薬額の高騰を考慮すると、当初の2023年度請求額(80万円)では、論文投稿を行いつつ、日々を実験を遂行することは極めて難しい。従って、前倒し支払請求を行った。 2023年度、ゼブラフィッシュにおける組織再生に関する論文を2報投稿する予定である。脂質メディエーター受容体はin vivoにおいて組織再生に関わるという薬理学的知見も得ているため、2023年度以降は、さらに詳細に薬理学的に本受容体が関わる再生機構を分 子・細胞レベルで解析するとともに、受容体欠損系統を樹立し、ゼブラフィッシュの組織再生における当該脂質メディエーターの寄与を明らかにする予定である。
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