研究課題
アラキドン酸は、生体膜リン脂質よりホスホリパーゼA2によって切り出されることで産生される多価不飽和脂肪酸であり、シクロオキシゲナーゼ(COX)、または5-リポキシゲナーゼ(5-LOX)によって、それぞれプロスタグランジン(PG)、ロイコトリエン(LT)に代謝され、特異的なGタンパク質共役型受容体を介して、全身の様々な臓器で多彩な生理・病態作用を発揮する。古くから研究されてきたアラキドン酸由来生理活性脂質であるが、近年、発生・再生における新規機能が報告され注目を集めている。一方、現在のところ、PG、LTの発生・再生作用がどの受容体サブタイプを介して、どのような分子機構で発揮されるのか、その全容解明には至っていない。本研究では、「アラキドン酸由来生理活性脂質の発生・再生作用の全容解明」、及び「再生医療へのアラキドン酸由来生理活性脂質の応用のための分子基盤の構築」を目的として、発生・再生研究において世界中で汎用されているゼブラフィッシュをモデル生物として、脂質受容体のシグナル伝達にフォーカスして解析を進めた。ゲノム編集によって、これまでに申請者らが同定してきたPG受容体の網羅的な欠損系統を作成し、胚発生過程における各臓器を調べた結果、複数の受容体欠損系統において、臓器の形成異常が観察された。この中でもX受容体を介した腎発生機構の研究、及びY受容体を介した性腺発生機構の研究が最も進んでおり、現在、論文投稿準備中である。それに加え、生理活性脂質受容体Zがヒレ再生に関与する可能性を薬理学的に推定し、当該受容体の生化学的解析、発現解析を行った。今後、受容体欠損系統を用いた更なる解析を進めながら、哺乳類モデルへの応用も視野に入れて研究を展開する予定である。
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